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デジスコ導入記−その1 2003/04/25

《デジスコ?》
 「デジスコって何?」とおっしゃる方に⇒デジカメ+スコープ(望遠鏡)のことです。元々天体望遠鏡で見た星を写真に撮るのに使われたコリメート法と呼ばれる方法で、望遠鏡を眼で覗く代わりにカメラで覗くということです。デジカメの登場を期にバードウォッチングの分野でうまく利用できたことから広まってきたようです。なぜデジカメかというと、望遠鏡の接眼レンズよりもカメラのレンズが小さいことと、モニター画面で確認できるというのが最大の理由です。

《きっかけ》
 私がデジスコを使ってみたいと思ったのは2003年2月ですが、一応デジカメを趣味にしており、インターネットでデジカメや写真に関する情報を収集していた時に目にしたのがきっかけです。最初は意味が判らなかったので、インターネットで「デジスコ」と入れて検索してみると割と沢山出てきました。殆どが野鳥撮影でしたが、ものすごく大きく撮れており、しかも鮮明できれいなのに驚いた次第です。
 私が使っているデジカメはミノルタDiMAGE7で35mm判換算28mm〜200mmですが、撮った写真の大半が200mmの最望遠であり、どうも望遠願望が強いようです。200mmで撮ってもまだ不足で、トリミングするものがかなりあります。特に野鳥を撮った場合は、極力近づいて撮ってはいるのですが、それでも全く不足で計算上1000mmを超えないと満足できる大きさにならない状態でした。かといって、レンズ交換デジカメと1000mmレンズを持てるかというととんでもない、100万、200万とかかりそうなのは判っているので、欲しいという気持ちすら湧いて来なかったのです。500万画素で撮った写真を縮小なしで400×300程度でホームページに載せていました。
 これが、デジスコを使うと、2000mm、3000mmは当たり前、むしろ1000mm以下の方が難しいという贅沢な環境、しかも100万を超えるレンズに引けをとらない鮮明さで色もきれいに撮れるのです。それが実売7、8万円のスコープがあれば可能。と、いうことで、ここで無性に欲しくなってきた次第です。

《購入前の調査》 実験
 双眼鏡も使えるという情報もあり、手持ちの双眼鏡が在ったので、まずはどんなものかテストしてみることにしました。双眼鏡は対物レンズ径50mmの少し大きめのものと、20mmの小さいものが在ったので、それぞれでテストしてみました。デジカメはDiMAGE7を使った場合には全く駄目で、画像そのものは双眼鏡で見たように拡大されてはいますが、画面の真ん中に小さく丸く写るだけでした。もう1台持っていたデジカメFinePix6800Zを使った場合、望遠側にすると画面いっぱいに写り、比較的きれいに写りそうな気がしました。そこで、ブレないように三脚に取り付けて光軸を合わせられるように工作し、試してみました。その結果何とか撮れることがわかり、その不恰好な双眼鏡デジスコを持って公園へ出掛け、野鳥の撮影を試みました。何十枚も撮りましたが、確かに大きくは写っているものの、殆どがブレており、色収差があり鮮明さに欠け作品として使えるものはありません。当然ながら口径の影響も大きく、50mmφならまだブレは少ないが、20mmφだと被写体ブレもひどくなります。ホームページ素材に使うにも苦しいものでした。このテストの結果、双眼鏡を眼で見た場合にはそこそこきれいに見えてはいても、写真にするとブレと色収差が大きく影響することがはっきり判りました。
 スコープとして市販されているものは、価格で見ても数千円から数十万円までピンからキリまであり、私もこのテストをする前は2〜3万円のものにしようかと考えていたのですが、きれいに撮るにはある程度以上のものでないといけないと判ってきました。インターネットで導入経験者の経験談を読んでいると、最初は安いものを買って、使ってみた結果、性能に満足できず、結局高性能機に買い替えている例が多いようでした。

《機種決定》
 そしていよいよ「自分も買うぞ」と決めたのですが、機種選択で次の条件を設定しました。
 @対物レンズ口径は60mmφ以上:これより小さいと暗く、ブレが出やすい。
 AEDレンズ(特殊低分散ガラスを使ったレンズ)を使ったもの:ノーマルレンズでは色収差が出て、鮮明な画像を得にくい。
 BEDレンズ使用、同一口径でもメーカーにより差がある:性能差は価格に出ているとみてよい。
 Cデジカメアダプターを取り付けられること:光軸合わせやブレ防止が厳密でないときれいな結果が得られない。
 Dデジスコに合ったデジカメも購入:デジスコではスコープが主体であり、デジカメはスコープに合うものを選択しないと、スコープへの取付、ケラレ、レリーズ取付、等で困難が多い。
 最終的に決めたのは、
 スコープ=KOWA TSN-664ED 30×アイピース
 デジカメ=NIKON CoolPix4300
 購入先はデジスコ関係の専門店である協栄産業のネットショップでのお買得デジスコセットが機種決定条件に合っていたので、これにした次第です。注文後2日目に届きました。

《試し撮り》
 届いたのが4月14日(月)の夜のため、この日はセットアップのみ、一応仕事があるため翌日も何も出来ず、デジカメのマニュアルを読むのみ。16日の夜、晴れて満月が出ていたので、これを撮ってみました。大きさや鮮明さは十分満足のいくものでした。この時照準器がないとデジカメ液晶モニター画面に取り込むのが難しいことを実感し、紙細工で照準器を自作。また、昼間は液晶モニター画面は見づらいとのことで、百円ショップで買った虫眼鏡レンズを使ってこれも紙細工で自作しました。それぞれ取り付けはマジックテープを使いました。
 待ちに待った休日の19日(土)早朝から近くの道満グリーンパークへ野鳥を撮りに出掛けました。彩湖の水鳥はカワウ、コサギ、オオバン、カルガモしか残っていなかったのですが、まずこれらを撮り、小鳥ではカワラヒワ、ホオジロ、が撮れました。しかし、数分間じっとしてくれた鳥は何とか撮れましたが、動き回る鳥は非常に難しいことを実感しました。
 まず、小鳥は見つけるのが大変です。ウグイスも鳴いていたのですが、いくら探しても見つからずあきらめました。ホオジロは木のてっぺんで長時間囀ってくれたので何とかなりました。一応自作の照準器があったので、取り込みはあまり時間はかからなかったのですが、三脚が問題で、固定して手を離すと少し上を向いてしまうのです。これはデジカメを付けたことにより、手前側が重くバランスがとれていないためだとわかりました。そこでバランスプレートが必要だと実感しました。もしかしたら三脚も買わなければならないのかとちょっと不安になってきました。

《機器の追加購入》
 30倍接眼レンズを使っているのですが、大きく撮れる点についてはよいのですが、大き過ぎる場合、少し引こうとして、ズームを引くとたちまちケラレが出るのです。協栄産業がデジスコセットとして売っているのだから、もう少しましかと考えていたのですが、殆どテレ側いっぱいのみOKという感じです。30倍でテレ目いっぱいだと3400mmにもなり、ちょっと行き過ぎの場面も多いのです。また、晴れてやっとシャッター速度1/100以上でちょっと曇ると1/50とかになり、ブレの影響が出やすくなってしまいます。倍率が少ない方が当然明るくなるので、ここで20倍接眼レンズも必要と実感しました。
 さらに後から知ったのですが、KOWA TSN-660シリーズとCoolPix4300の組み合わせなら、全ズーム域でケラレのないアダプターN4300が既に発売されていたのです。広角側だとf2.8も使え、かなり明るくなるし、全域が使えれば、構図も決めやすい。そこで、東京方面へ行ったついでに帰りに秋葉原の協栄産業へ寄り、ケラレ無しアダプターN4300、ビクセンのバランスプレート、20倍ワイドタイプ接眼レンズを買うことにした次第です。N4300は在庫が無く、後で送ってもらうことにしました。かなり人気が高く品切れになったのではないかと思われます。3日後に届いたので早速ケラレ有無を確認したところ、本当に全域ケラレ無しでした。20倍と30倍接眼レンズを使うと760mm〜2280mm、1140mm〜3420mmの範囲ですべて使えるということになります。760mmだとかなり明るくなるので、飛びもの(飛んでいる鳥)にも使えるかも知れません。バランスプレートを使うことにより、以前から持っていた三脚でも手を離したら動いてしまうという問題は無くなりました。しかし、動いている物を撮る場合には微動装置なども欲しくなりそうで、もう少し練習を重ねて金の余裕があれば買うことにしました。

《電源の話》
 次に電源ですが、CoolPix4300はリチウムイオンバッテリーを使っており、90分間持つとのことですが、デジスコ撮影では、常時モニターオンで撮影中は殆ど電源は入れっぱなしになるというのが1回目の試し撮りで判ったため、予備バッテリーをもう1個買うよりは、単三ニッケル水素電池6本で動くとの情報から単三電池ホルダーを買ってきて外部電源を自作しました。1回目に作った時は電線が細過ぎて電圧降下が大きく外部電源単独では動かなかったため、20AまでOKの太い電線に変えたら何とか動きました。でも、CoolPix4300は外部電源でリチウムイオンバッテリーを充電しながらでも使えるタイプのため、電線は細くてもつないでおくだけで十分外部電源として役立つことがわかりました。また、これも後で知ったことですが、単三6本のデジカメ充電バッテリーなるものが市販されておりました。この補助電源を使えばおそらく3〜4時間は使えるし、ニッケル水素電池の予備を持っておればもっと長時間使えることになりそうです。

《これからのデジスコ》
 インターネットでの話になりますが、デジスコはここ数ヶ月で急速に広まっているように思えます。実地でもよく見かけます、ネット上の情報はどんどん増えており、特に鳥撮りの分野ではデジスコで撮った作品が増えています。しかし、この撮影法はまだ完成された機器がないので(KOWA TD-1が今秋発売予定とのことですが(注))、まだまだカメラマン個人で試行錯誤しながら開拓している段階のようです。撮影そのものにもかなりの慣れや技術を要するようですが、私自身が使ってみて『超々望遠の世界』にものすごく引かれ、のめり込んでしまいそうな魅力を感じております。
 高価な長玉と性能上の差があまり無いことがわかってくれば、超望遠はおそらくデジスコタイプに置き換わるのではないでしょうか。多分TD-1のような超望遠専用機か、スコープ取付用専用デジカメなるものが発売されるかも知れません。また、大きな接眼レンズを使ったレンズ交換デジカメ用デジスコも開発されるかも知れません。また、オートフォーカスのスコープも開発されるかも知れません。色々期待のできる分野です。
(注)KOWA TD-1は発売延期され2004/07に発売されました。

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