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デジスコ導入記−その4 2003/11/22

《解像不良の不満》

 デジスコを始めて8ヶ月、秋になって冬鳥が多く見られる季節になってきた。「さあ、これからドンドン野鳥を撮るぞ!」という段階であるが、ちょっと気になることがある、否かなりの悩みというべきか、私のデジスコシステムの最望遠(30×で3倍ズームすなわち90倍、3420mm相当)で撮った作品で、いま一歩鮮明さが不足するのである。インターネットの野鳥サイトの画像掲示板に投稿されている作品では同程度の倍率でもビシッと決まったきれいな画像があるではないですか。これはなぜか?スコープの鮮明さが足りないのか、高倍率でよく起る機材ブレなのか。もし、スコープなら結局口径80mmクラスを買わねばならないことになるのか。確か『60mmクラスは多少暗いが被写界深度が深く、ピントが合い易い』ということで66mmのTSN-664を選んだのである。もし、スコープが原因ならあまりにも無駄使いになってしまうではないか・・・
ということで、取敢えず機材ブレを徹底的に追求してみた。スコープは必ず手でピントを合わさねばならないので、スコープのピントノブを回す。この時手の動きでモニターの画像は激しく動くのである。そして手を離した後も振動は減衰していくが、しばらく残る。完全に静止したころを見計らってリモートケーブルのボタンを押すことによりシャッターを切るのであるが、このケーブルが揺れたりすると、モニター画像が微妙に動いてしまうのである。だから私はリモートケーブルの中間を雲台の付け根に固定している。それでもボタンを押す手が動けば何か影響が出ているのではないかと疑った。

 超々望遠では、あらゆるものがブレやボケの原因になる。ざっと挙げただけでも次のものがある。
★風:そよ風でもデジスコシステムは図体が大きいので影響を受ける。小枝が揺れるほどの風があればもう駄目。アシスタント(妻)に日傘で風防を設置してもらわねばならない。
★他人が歩く:公園などで、近くを散歩する人が歩くだけで、地面から振動が伝わってくる。子供が飛び跳ねたり、ジョギングで走る人がいたら居なくなるまで待たねばならない。
★自動車・鉄道:近くに大きな道路があったり、鉄道があると、その振動が伝わってくる。特に大型車が頻繁に通る道路があると、あきらめるしかない。
★熱:特に天気の良い日は日射で空気が揺らぐ(陽炎)ため、遠くの被写体はボケてしまう。
★ピント合わせ:スコープのピントノブでピントを合わせるが、この時の手による操作で画像は激しく振動する。手を離せば振動は減衰していくが、完全に止まる前にシャッターを切るとブレてしまう。
★照準・構図調整:雲台を使って動かすのであるが、この時も画像は大きく動き、振動するので止まるのを待たねばならない。
★レリーズ:レリーズの質が良くないと、その動きやジャリッという振動が悪影響する。
★シャッター操作:レリーズを持つ手の動きがケーブルを通じて伝わる。
★カメラ:カメラがシャッター駆動時に発する振動。コンパクトデジカメではメカニカルシャッターと擬似音程度で大したことはないが、デジ一眼ではミラーショックが大きく影響する。
★被写体:被写体が動物なら、必ず動く。ところが、小鳥類はパッパッとした動きで静止した瞬間があるため、この間にシャッターが完結すればOK。鳥が留まっている枝が揺れれば駄目。
★シャッター速度:シャッター速度が遅いと当然ながらあらゆるブレの影響を受けてしまうのであるが、デジスコは超拡大しているので画像は暗く、シャッター速度は遅い。90倍だと晴れて条件が良くて1/100秒がやっとである。曇りや陰だと1/10秒以上になってしまう。

《解像不良の解決》
 さて、これらの対策であるが、どうすればよいのか。どうにもならない原因は避けるしかしようがないが、対策がとれるものは徹底的につぶしていくしかない。
◎三脚:できるだけ大きく重いものがよい。しかし大きく重いと持ち運びが大変。そこでカーボン三脚でストーンバッグなどで錘を付けるやり方がある。三脚の脚はあまり伸ばさない方がよい。4段よりは3段三脚、しかも脚を伸ばさず、座って撮影するのがお薦め。携帯イスなど持っていくとよい。
◎雲台:これも大きく頑丈なものがよい。デジスコ用にはビデオ雲台が動く被写体を捉えるには良い。三脚・雲台共耐荷重はデジスコシステムの重量の2倍程度を目安にするのがよさそうで、デジスコが2Kgだと耐荷重4Kg以上にしておくとよい。
◎取付:スコープはアダプターとカメラが付くと重心が取付位置からかなりずれることになる。そこで、バランスプレートは不可欠となる。また、スコープの取付は2点で取り付けるべきである。2点で固定すれば、ピント合わせ等の操作により生じる振動がほぼ手を離すと同時に止まってくれる。1点支持だと振動減衰に1〜2秒程度かかることがある。
◎レリーズ:レリーズケーブルは途中を三脚か雲台に留め、手元の動きがケーブルを伝ってカメラに伝わらないようにすべきである。リモートコードも同様、コードの途中を三脚か雲台に留めた方が良い。

 私の仮説であるが、60mmクラスのスコープは80mmクラスより安価である。なぜ60mmクラスを買うかというとお金がないからである。そんな人は当然、三脚や雲台も安いものを選ぶ。すると機材ブレ対策不十分なためブレボケ作品を生み出す結果となる。正に自分がそうである。そういうことで、不足する機材を買い直すことにした。
 以上の対策を行った現時点の私のデジスコシステムがこれである。
三脚は一生ものということで、新製品で自分では値のはるカーボンタイプを買った。
雲台はビデオ雲台が良いということで、マンフロット700RCを買ったが、後にして思えば重くても128RCの方が良かった。
レリーズはプロ用の高いものを買った。
2点支持のための工作(紙細工だが)を行った。



さて結果は、
 右の写真は、機材ブレ対策を採った後に撮ったものです。写真を等倍にして400×400で一部を切り取ったものです。一応ピントも合っており、ブレは殆ど見られません。倍率はこのデジスコシステムの最大の90倍、35mm判換算で3420mmで、シャッター速度は1/42です。ツグミは静止してくれるので、被写体ブレは無いと思われます。これは完璧を図るため、レリーズではなく、リモートコードを使った。
 等倍でこの程度の解像度が出ればOKではないでしょうか。従って、結論としては、これまでのボケは殆どが機材ブレであった。そして上述の私の仮説はある程度(少なくとも自分のケース)では当っていたということでしょうか。あと口径の大きなスコープはシャッター速度を稼げるので、機材ブレの影響を多少とも受け難いのではないかと言えそうです。

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