19.ボケを活かす
花や人物の主要な部分だけにピントが合い、その前後をボカすことにより、被写体の美しさを浮かび上がらせる撮り方で、その美しいボケ方が「ボケ味」と呼ばれています。これを活かせるかどうかは、多くのカメラマンがこだわりをもってカメラやレンズに要求する性能でもあります。 デジカメは結像部である撮像素子(CCDやCMOS)がフィルム式カメラのフィルムと比べてかなり小さいため、これに比例してレンズの焦点距離も短くなり、被写界深度(ピントの合う範囲)が深くなっています。写す対象によってはこの方が有利な場合もありますが、被写体の前後はぼかして撮りたい、いわゆる「ボケ味を活かして撮りたい」場合には不利になります。 (参考:被写界深度の計算式はこのページの下の方) |
撮影条件と被写界深度の深さ(=ボケにくさ)の関係は次の通りです。
被写界深度が浅い (ぼかし易い) |
被写界深度が深い (ぼかし難い) |
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@レンズの焦点距離 35mm換算でなく絶対値 |
長い | 短い |
Aレンズの口径 | 大きい | 小さい |
B絞り値 | 小さい | 大きい |
Cレンズと被写体との距離 | 短い | 長い |
ボケ味を活かした撮り方をするには、
A)絞り優先で開放とし、
B)ズームは望遠側にして、
C)構図の許す限り近づいて、
D)近くを撮るなら望遠側マクロで、
E)被写体とバックとの距離はできるだけあけて、
F)望遠側を使うので三脚が必要になります
また、ボケそのものの形も絞り羽根の枚数や形状、レンズの設計により変わってきます。特別な効果を狙う以外は自然にボケた円形が良いと言われています。右はボケの形状がわかる部分を切り取ったものです。 |
@とAとボケの形状はカメラを買う段階で決まってしまいます。従って、ボケ味を活かした写真を撮りたい場合は実焦点距離の長く、口径の大きい(F値の小さい)レンズを持った(又は付けられる)カメラを選んでおく必要があります。レンズ一体型デジカメでは、できるだけ大きなCCDを使い、光学ズーム倍率が大きく、明るい(F値の小さい)レンズの付いた機種です。今のところ、光学ズーム5倍以上の機種なら何とかボケ味を活かせるのではないでしょうか。しかし、レンズの明るさではF2.8が多く、F1.4などの明るいレンズの付いたものはまだ発売されていないようです。そこまで要求するユーザーはレンズ交換式デジカメを求めるからでしょうか。レンズ交換式デジカメなら35mmフィルム式カメラのレンズが使えるようになっており、比較的大きなCCDを使っているので、レンズの選択で決まってきます。ボケの形状については購入前にサンプル画像等で確認しておいた方がよいでしょう。
光学ズーム機能の無いデジカメでは「ボケ味」は不可能ですが、光学3倍ズームのデジカメでは全く「ボケ味」は活かせないという程ではなく、上記A)〜F)すべてを目いっぱいにすれば、そこそこ背景のボケた撮り方はできます。
1/1.7インチCCD、光学3倍ズームf=24.9mmで撮ったもの 適度にボケてバックの雰囲気もわかる |
2/3インチCCD、光学7倍ズームf=50.8mmで撮ったもの バックが何かわからない程ボケている |
※絞り優先機能の無いデジカメの場合
コンパクトカメラタイプのデジカメでは、わりと高価なものでも絞り優先機能を持たないデジカメもあります。このようなデジカメで背景をボカシたいという場合にはどうすればよいのでしょう?
この場合、NDフィルター(減光)を準備します(無ければサングラスでもOK)。まずは、ズームは目いっぱい望遠側にし、撮りたい花と背景の距離ができるだけ大きくなる位置から狙います。またマクロを使った方がボケ易くなります。それで一度シャッター半押しにして絞りとシャッター速度表示を確認します。絞り値がそのカメラの望遠側の開放値(f2.8とかf3.5)なら、それでOKですが、日光が当っている場合は、それ以上の絞り値(絞られた状態)になることが多いのです。その場合にNDフィルターかサングラスをレンズの前に置けば、NDフィルターの仕様分は開放値に近づき、背景がボケ易くなります。
AE(自動露出)はブレ防止のため、まずはシャッター速度1/250程度を確保しようとするので、NDフィルターで少し暗くしてやると先に絞りが開かれるのです。
下の写真は絞り優先機能の無いデジカメで撮ったものです。左はf6.9のため被写界深度が深く、背景の葉が比較的はっきり写っています。右はND-4フィルター(2絞り分減光)をレンズの前に手で被せて撮っています。f2.8の開放値となり背景の葉はボケています。ちなみに背景の葉との距離は25cmです。
f6.9、1/450 | f2.8、1/480 |