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★★ シュミットカセグレン望遠鏡の副鏡 再メッキ ★★
2018年09月12日
 
ヤフオクで手に入れた約35年物のMeade SCT 8" F10 2000mm OTAですが、整備のため分解してみると、副鏡のアルミメッキが剥がれ、30%ほどの光量低下と撮影結果に色不良も起こしたので、副鏡の再メッキを行いました。ニュートン式の主鏡、斜鏡の再メッキの例は多いのですが、シュミットカセグレンの副鏡の再メッキ例はネット検索でも全く見つけられなかったので、ご検討中の方への参考にと、ここにまとめてみました。
どんな望遠鏡かと言えば、こんなものです。惑星撮影用に拡大撮影用アダプターを介してASI290MCカメラを取り付けた状態です。外見は全く傷、汚れもないきれいな鏡筒です。

補正レンズを外して、副鏡を見るとアルミメッキに無数の点状剥がれが見られました。剥がれ部分が少し赤っぽいため、撮影結果に部分的に赤色が入りました。
以前から使ってきた、同じシュミットカセグレン式の口径5インチCelestronC5での作品と比べてむしろ劣る結果となったので、再メッキすることにしました。
反射望遠鏡の再メッキをしてくれる会社はいくつかありますが、「天体望遠鏡の主鏡、斜鏡、副鏡、自作ミラーコーティング蒸着再メッキ」を前面に出し、価格表もあってリーズナブルな価格でやってくれる セルドレン http://www.jpcell.co.jp/celldren/ に依頼することにし、Orderフォームに記入送信しました。フォームに「副鏡はアルミ台座に接着されており剥がせないのでそのまま送ります。」と記入したところ、「薬液に漬けるのでアルミ台座から剥がして副鏡単体でお送りください。」との返信がありました。問題はこの写真副鏡の下に付いている5mm厚のアルミ台座です。1mm厚の両面接着テープ様のものでしっかり接着されています。これを剥がさないと再メッキは不可ということになります。

あまり考えてる暇も無いのでダメ元でこれを剥がすことにしました。剥がし方もわかりません。仕方なくスケロをアルミ台座とガラスの間に差し込んで、ぐるぐる回しながら押し込んでいきました。かなり力を入れないと入っていかないので、力任せにやるしかありません。十数ミリの厚みのガラスですが、パカッと割れるのではないかとヒヤヒヤしながらの作業でした。最終的には両面テープが構造破壊した形でアルミ台座とガラスと両方にテープ材が残って剥がれました。相当しっかり接着されていたということです。くっ付いて残ったテープ材はゴリゴリ削り取りました。
台座がら剥がすことが出来たとセルドレンにメールを入れたら、決済手続きのご案内メールが届き、サイトからクレジットで支払い処理、決済額は送料込みで7,480円でした。こちらから送った梱包をそのまま使うとあったので、鏡面に傷が付かないよう紙細工で入れ物を作って副鏡のガラス部だけを送りました。翌日先方に届いたようで、次のような写真付き確認メールが届きました。
「今回、送付頂いた反射鏡は凸レンズとなっており再メッキ加工をする際添付ファイルにございます赤線部に数百ミクロン程度の傷が発生する可能性がございます。このまま、再メッキ処理へ進めてもよろしいでしょうか。」
どうやら、このサイズのような凸面鏡の再メッキは初めてのようで、蒸着時の冶具にも工夫が必要だったようです。周囲の面取り部なので問題ないとの返信を入れました。
丁度2週間で再メッキされたものが、しっかりした包装で、段ボールは送ったもので送られてきました。なぜか、Celldrenの名前の入った「濡れ傘入れ」も入っていました。戻ってきた副鏡です。鏡面は新品同様のきれいなものです。

さて、これを副鏡アルミ台座に接着しなければなりません。これが大変で、ずれたり斜めに接着されると光軸が大きく狂って使い物になりません。しかも接着は「3Mスコッチ超強力両面テープ」を使います。ちょっとでも歪んで接着しようものなら、剥がれないテープなのでやり直しが効きません。そこで、紙細工になりますが、このような「冶具」を作りました。台座の方が若干外径が小さいので、両面テープを貼り付けた台座を下にセットし、剥離テープを剥がして上に副鏡を貼り付けます。こうすることでセンタリングが大きく狂うことなく接着ができます。台座との並行性は両面テープの厚みの均一性に頼ることになります。両面テープの幅は19mmなので、58mmΦ台座には3っつに分けて貼り付けました。

結果は肉眼では分からない程度にうまく接着できました。しばらく上に重りを置いて接着を馴染ませた後、組み立てました。
副鏡部の構造はこのようになっています。中央にあるワッシャの厚み分を周囲3ヶ所の調節ボルトを締めたり、緩めたりすることで、副鏡の傾きを変えて光軸を合わせるようになっています。

実は再メッキ後の組み立てにおいて、接着剤の両面テープの厚みのバラツキでワッシャ(茶色部分)の厚みである調節範囲を超えてしまい、調節ボルト1本を締め過ぎて六角穴を舐めてしまうというトラブルがありました。何とか調節ボルトをはずすことができて、ワッシャを追加して調節範囲を0.5mm増やし、調節ボルトも十字ネジに取り替えて光軸合わせをすることができました。
シュミットカセグレン副鏡の再メッキ例が無いのは、一旦台座から剥がさなければならない工程が伴うためだと思われました。プロがやるとしても、剥がす際に副鏡のガラスを割ってしまうリスクがあるので引き受けられないのでしょう。自己責任で割れてもダメ元だと覚悟の上でないとやれない作業ではないでしょうか。メーカーから部品として取り寄せて交換すれば良いのでしょうが、発売から40年も経った製品の部品はメーカーも持っていないでしょう。

この副鏡の再メッキ後の成果は秋雨前線と強風などで未だに確認出来ていません。確認できないうちに惑星シーズンは終わってしまいそうです。

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