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★★ 秋が瀬公園に野鳥が来ない ★★ 2006年01月13日

 今シーズンは、秋が瀬公園に行っても野鳥がいない。例年なら、アオジ、ジョウビタキ、シメ、ルリビタキ、シロハラ、ホオジロ、ツグミなどの冬鳥が11月〜4月の間たくさん居付き、カワセミ、コゲラ、シジュウカラ、メジロ、オナガ、ハクセキレイなどの留鳥は年中よく見られるのであるが、昨年から減ったなと感じ、今年は殆ど見られず、囀りもあまり聞こえない。インターネットの野鳥サイトでも秋が瀬公園に冬鳥が来ていないとの情報が多い。

 秋が瀬公園、道満グリーンパークは我家から近く、子供が小さかった頃からよく行っている公園であり、30年くらい通っている。都市公園とは違い、荒川の遊水域を利用した公園であり、自然が豊富であった。東京を洪水から守るため、一時的にこの一帯に水を溜める役割があり、梅雨の大雨や台風では公園が冠水して湖になっていた。この年に数回の冠水が自然を豊富にしていたのである。色んな植物の種が運ばれてくるので植物の種類も豊富で、希少種も多かった。有名なサクラソウ自生地もこのようにしてできたそうだ。池の魚類も豊富であった。『川は山と海をつなぐ野生の通路である。』 したがって野鳥も豊富であったのである。

 いったい野鳥が来なくなった原因は何なんだろうかと考えてみた。
1.温暖化や今年の寒波の影響で野鳥が越冬地を変えてしまったのだろうか
2.鳥インフルエンザや繁殖地の公害で鳥の絶対数が減ってしまったのだろうか
3.工事で公園の環境が変わってしまったので野鳥が警戒したのだろうか
などが考えられるが、主原因が1.や2.なら日本全体に影響することであり、全国的に騒がれるであろうが、今のところその気配はない。となると、3.の工事ということになってしまう。

 この一帯はここ数年で大きく変わってきている。大きな変化は彩湖が造られたことと、河川敷の真中に堤防が新たに造られたことである。昨年の工事では秋が瀬公園が完全に堤防で囲われてしまった。これは公園の環境を大きく変えてしまった。景観面では公園から秩父の山並みなどの遠景が見えなくなってしまった。以前は遠くの山に沈む夕日が見えたのに、今では近くの土手に遮られてしまう。自然環境としては、冠水が無くなったうえに、しっかり草刈がなされるため、植物の種類が減ってしまい、ありふれた生命力の強い雑草だけが目立つようになった。堤防工事で地下の伏流水の位置も変わったようで、池が干上がるようになり、水生生物は絶滅した。荒川本流からの水による冠水が無くなったので、もう池に魚やエビが戻ることもないだろう。そうなるとカワセミの餌もなくなるのではないか。
 昨年、野鳥が減ったと感じた時には、野鳥がよく来るピクニックの森の道路を隔てた側で大きな堤防工事が行われていた。ここは山側から来る野鳥の通路であったのであるが、この通路が堤防で塞がれてしまった。鳥なんだから堤防なんてひとっ飛びで超えられると思われるかも知れないが、山からやってくる野鳥は木や藪づたいで移動している。冬場は落ち葉の下に隠れている虫を餌にしているので、あまり高くは飛ばない。そんな野鳥からは途中に堤防があると、その先にある公園の森が見えないのだ。移動する時は飛んで行く先の木や藪に目標を決めているようである。その目標が見えなくなってしまったので、毎年来ていた野鳥も行き先を変えてしまったのではないかと推測するのである。あるいはそこにいつもの公園の森があると判っていても、工事で辺りの景観や地形が変わってしまったので、警戒して寄り付かなくなったのかもしれない。

 なぜこんなに絶え間無く工事が続けられるのであろうか。工事を発注する管理者側から言わせれば、防災や安全性向上のために必要な工事であると言うであろうが、元々堤防で囲われた内側になぜもう1本堤防を作る必要があったのだろうか?単に公園を水から守るだけである。年に1、2度の公園冠水を防ぐ工事で公園の『自然』という価値を台無しにさせてしまったということになる。昨年は公園内に防火水槽なるものが作られた。これが原因なのか前述の堤防が原因なのかどうかは判らないが、昨年はヒレンジャクがいつものヤドリギに来なかった。何でこんな場所に防火水槽が必要なんだろう?。タバコの火の不始末で枯草が燃える火災はたまに起こる。しかしそんな時、係り員しか使えない設備では初期消火は無理である。防火水槽にするよりは、すぐ隣の干上がった池を干上がらないようにする方が誰でもすぐ水を汲んで初期消火できるのではないかと思うのである。役所としては、『工事業者育成』のため、絶え間無く工事を発注しなければならないのであろうが、もう少し自然に配慮した工事を考えてもらいたいものである。

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