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★★ 60の手習い ★★ 2005年12月03日

 筆者は60歳になってからJAVAプログラミングを習得する羽目になった。今、WEBアプリケーションをサーバーを使うエンタープライズシステムとして開発している。プログラムをされない読者ではWEBアプリケーションとかエンタープライズシステムと聞いても何のこっちゃということになるであろうが、早く言えば、ネットショッピングのプログラムのようなものをJAVA言語で作っているということである。

 エンタープライズシステム(企業の全社システム=遠隔地の支店営業所でも使うシステム)ではLAN/WAN環境でシステム開発するが、かつてはメインフレーム(大型の汎用コンピュータやオフコン)が使われてきた。これが最近はUnixやWindowsあるいはLinuxなどのOSを使ったサーバーでも使えるようになってきて、この方がハードウエアとしては安上がりになるのである。サーバーを使うシステムではクライアントサーバーシステムが主流になっていたが、これではプログラムを端末機にインストールする必要があり、バージョンアップなどの管理コストや高速通信、あるいはメタフレームと呼ばれる高価なシステムが必要であるなど、案外ランニングコストが高くつくことがわかってきた。そこで、端末機としてはホームページを見るブラウザーさえあればOKというWEBアプリケーションが良いという風に変わってきたのである。これなら安いハードウエアでインターネットなどの安い通信環境でメインフレームと同じような使い方ができるのである。
 というようなことで、筆者の勤める会社でもこれからのシステム開発はこれにすべきだということで、筆者がまず習得してこの有利さを示す羽目になった次第である。

 最近はOSでもLinuxは無償で提供されるし、JAVAを使ったJ2EE(サンマイクロシステムズの提唱する標準)の開発環境や使用環境も無償で提供されるようになってきた。このようなWEBアプリケーションシステムは社内開発するのであれば、普通のパソコンを使って殆どタダで開発できるようになってきたのである。だから「こうこうしかじかで新しい開発環境を作ります」と予算をとって始める必要もない。以前は開発環境を作るだけで数十万円〜数百万円はかかったものである。一体提供元は何で稼ぐのだろうかと疑問に思ったものである。しかし、いざ開発に向けて勉強を始めると、これがなかなか難しい。元が無償だからあまり丁寧な取説や解説が無い。あらゆるところでトラブルにぶつかる。開発ツールの使い方があまりよく判らない。その都度WEB検索して解決策を探すがピッタリの事例が無い。ようやく英語の事例を見つけて解決なんてこともあった。結局無償で提供する側はツールの販売で稼ぐのではなく、無償提供で広めておいて、関連製品の販売や開発受託、人材教育の方で稼ぐのではないかと思われた。確かにセミナー料金は数十万円もし、開発ツールを買うのと同じくらい高い。幸いにも筆者はこれまでにいくつものプログラミング言語を経験していたので、こんな場合はこうするのではないかと当てずっぽうでやってみたら”ピンポーン”という具合でインターネットだけを先生にして何とかシステム完成までに至った次第である。

 開発環境構築(コンピューターの中でJAVAが動くようにしたり、JAVAアプリケーションサーバーと呼ばれるソフトやデータベースや開発ツールのインストールとお互いのリンクのためのドライバーの設定など)に取り掛かった時、若ければ何とかなるだろうが、60歳を過ぎた自分にできるのだろうかとちょっと不安も感じたものである。しかし、のめり込んでしまうと、何か壁にぶつかっても1〜2日調べれば必ず解決策が見つかり、自信もついてきたものである。そしてある段階を過ぎると、難解であったオブジェクト指向のJAVA独特のプログラミング記述もスイスイ理解できるようになり、他人の書いたプログラムも分析し、自分のプログラミングに応用できるようになったのである。

 歳をとると仕事ができなくなるので会社には定年というものがある。確かに昔のように、体力が必要な肉体労働ではそうであったろうが、近年の労働環境は体力の必要な仕事はロボットなど機械がやってくれるようになり、人間は『ロボットや機械をコントロールするのが仕事』に変わってきたのである。そうなると、経験豊富で判断能力の高い高齢者の方が間違いのない仕事ができるのではないだろうか。最近あちらこちらで単純なプログラミングミスとか、設定ミス、テスト不足などによるシステムダウンなどのトラブルが目だっている。いわゆる2007年問題が表面化しつつあるのではないだろうか。何であれ仕事というものに頂点はない、常に勉強を続けなければならないのである。仕事の環境は若い人が熟練者のアドバイスを受けながら上達していくというのが理想であろう。熟練者自身もまた新しい知識や技術を身に付けるよう勉強を続けなければならないのだ。昔は『プログラマーの定年は30歳』などと言われた時代もあったが、何の何のこれからの高齢化社会、ボケるまでは働けるのではないだろうか。

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