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★★ パソコンは未完成製品だ! ★★ 2005年06月24日

 先日、息子の所へ行った時、ノート型パソコンが壊れたとの話が出た。キーボード手前の手のひらを置くスペースに肘をついたら壊れてしまったとのことである。ハードディスクには孫の1年半分の写真データが入っており、一度もバックアップを取らなかったとのことである。買った店に持っていくと、調査に1万円、データ救済(修理は別)に15万円かかると言われたとのこと。日本の超有名メーカー製で保証期間1年が過ぎたとたんにこれである。キーボード手前スペースは手のひらの重量には耐えても、腕の重量には耐えられず、その下の基盤まで撓んで壊れたようである。これはユーザー側から言えばパソコンは知的道具なので肘をついて考えることはあるはずだから『設計ミス』であるが、メーカー側の弁解としては『想定範囲外』というかも知れない。裁判にかければ弁護士の腕次第というところであろうか。もっとも裁判費用の方が高くつくので無理である。

 パソコンのトラブルというのは実に多い。筆者は仕事でも会社の多くのパソコンのトラブルへの対応にうんざりさせられたものである。パソコンと同様にCPUを使っており、操作頻度が高い家電製品であるテレビやビデオは滅多に故障せず、5年や10年は使い続けられる。我が家のテレビはワイド型が出てきて間も無い頃に買ったもので、もう十数年使っているが、昨年始めてリモコンがバッテリー部の断線で故障した。これは安いリモコンを買ってきて充分使えているのだ。次に買い換えるのは地上波アナログ放送が無くなる頃であろう。それなのに、パソコンだけなぜこんなにトラブルが多いのかということになる。

 トラブルで最も多いのは、ソフトウエアのトラブルである。パソコンというのは、使うソフトウエアで動作が決まるため、ソフトウエアに欠陥があれば即トラブルになる。だからトラブルが発生した時には、原因がハードウエアかソフトウエアかを切り分けなければならないのだ。これも、再起動したら元に戻ったという単純なものならよいが、OS系の問題だと再起動しても駄目とか起動できないとかで、切り分けすら容易にできないケースが多い。OSを再導入しても、レジストリに問題を引きずってくる場合も多く、色々試してみてようやく原因を推定できるというようなことになる。ソフトウエア原因の問題でも原因をつきとめて対処しようとすると、2,3日かかってしまうこともある。最近パソコンのトラブルでメーカーのサービスセンターへ持ち込むと殆どの場合、いきなりディスクフォーマットし、OSの再導入で新品と同様の状態にされ、データは消え後からインストールしたソフトも総て無くなってしまうのである。サービスセンターでも、問題の切り分けができるだけの技術者はほとんど居らず、ただマニュアル通りのリカバリー手順に従って作業するだけである。リカバリー段階でトラブルが出ればハードウエアの問題ということになり、今度はコンポーネントの交換ということになるが、これもかなり大きなコンポーネント単位で交換してしまう。例えば、画面に問題がありそうだと、画面全体を交換、ハードディスクの問題だとハードディスクを交換、その他は基盤全体を交換といった具合である。筆者の自宅パソコンのノート型で実際にあった故障では電源受け口と基盤との接続半田が折れたというのがあった。これなんかは、自分で半田付けして直ったのであるが、これも修理に出したら半月ほど預け、基盤全体を交換して、部品代と修理手間賃で10万円は請求されたであろう。最近はLSIやコンデンサ、抵抗といった個々の電子部品の故障率はかなり低下しており、5年や10年は持つようになっている。ハードで問題を起こすのは、物理的な力が繰り返し加えられる電源差込口やLANケーブル差込口、ノート型の画面折りたたみ部分など、金属疲労による配線の切断が殆どである。丁寧に使っていても断線は起こす。それは電源ON−OFFによる温度変化での熱膨張−収縮の繰り返しにより動かない部分でも金属疲労断線を起こすのである。その他は落下や乱暴な取扱いによるものであろう。

 これらパソコントラブルの根本原因は『未完成な製品を売っているから』と言えそうである。ソフトウエアのトラブルも未完成で、バグや欠陥だらけだからである。特にWindowsなどOSは発売時点で問題が出たら修正したものと入れ替える(Update)前提なのである。それなのに、それが原因で発生したトラブルで修理に出してもデータを消された上、修理代として大金を取られるのである。ハードウエアの故障も新製品競争で3ヶ月ごとにモデルチェンジをし、不十分な強度計算で小型軽量化するため、ちょっとしたことで上述のような金属疲労断線を起こすのである。おそらく温度負荷サイクル試験など行っていないだろうし、開発段階でそんな試験をやる時間すらないのであろう。もうそろそろ、パソコンも他の家電製品同様バカチョン向けにスイッチONで即起動し、10年くらいノートラブルで使えるものが出てきてよさそうなものである。

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