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★★ 天国と地獄 ★★ 2005年05月15日

 今年のゴールデンウィークは祝日と土日の関係が良く、3連休・3連休・2連休と土曜日との重なりが無いので、休日が多かった。29日のゴールデンウィーク初日から、旅行会社主催の立山アルペンルートと黒部峡谷トロッコ列車のツアーに行ってきた。このコースは個人でも行ったことがあるが、ここは完全に団体向けコースと言うか、団体に占領されたコースと言える。個人で車で行くと、大町側から富山側へ抜けて行くことができない。車を回してくれるサービスもあるが、結構費用が高くつく。その上、トロリーバス→ケーブルカー→ロープウエイ→トロリーバス→高原バス→ケーブルカーと乗り継ぐ度に整理券をもらって長時間待たされるのである。これが、団体だと予約した時間で割りとスムーズに時間通りに行ける。

 さらに団体だとすべてに割引が適用されるので安くなるのである。ここの料金は個人で行くと宿泊料も含めて、どれも目玉が飛び出すほど高いのだ。建設費に莫大な費用がかかったほか、除雪など保守にもすごい費用をかけていると聞けばうなづけるのだが、とにかく高い。ただひとつ個人で有利なのは、天候が悪いとやめることができる点である。とは言っても土日で折角計画したのだからと、里が晴れておれば出かけてしまうのが悲しい性で、筆者も個人で行った時はどれも天候に裏切られ、無駄な高額出費になってしまい、泣かされたものである。

 このルートは天候次第で天国と地獄の差がある。その上好天の確率が低い。里の天気がいくら良くても、北西の風が吹けば、必ず地獄が待っている。地獄とは、室堂でバスターミナルから1歩も出られない状態である。まず視界が無い。歩いても何も見えないので来た意味が無いばかりか、戻り道や方向がわからなくなる。へたすると遭難ということになってしまう。真夏でも気温は低く、雪になることもあるのだ。標高2500mで単純計算でも里より15℃気温が低い。しかし山は100mあたり1℃下がるとみた方がよい。すると里より25℃低く、里が30℃の真夏でも5℃である。これは里の真冬と同じ。そして北西の風ならもっと低くなる可能性があるのだ。天気が良いのは南東の風の時だけである。たとえ高気圧の圏内に入っていても高気圧の中心が北西側にあると北西の風が吹く。すると日本海の湿った風が立山にぶつかり上昇気流となって雲が発生するのである。だから天気図で高気圧が真上にきてから出掛けるのが良いのだ。高気圧が真上から少し南東側にあれば、南東の風になり、雲は南東の山にさえぎられるので晴れるのである。団体だと予め日程が決まっているので、好天に恵まれるかどうかは運次第ということになる。夏場で太平洋高気圧が張り出している時は比較的好天が続くが、その他の季節は好天が3日と続くことはなさそうである。

 今回筆者が行った時は、1日目が地獄で、何も見えず、雨風が強く、雪の大谷さえ見ることができなかった。しかし幸運にも2日目は快晴となり天国であった。大観峰からご来光も拝め、朝日に輝く雪山を楽しめたのである。筆者が帰った翌日はもう地獄になったようである。

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