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★★ 他人の不幸は蜜の味 ★★ 2005年05月07日

 筆者はわりとコラム好きであるが、きっかけはasahi.comのコラムを読むようになってからである。特に昨年7月に突然亡くなった永井明氏の「メディカル漂流記」などは興味深く読ませていただいたものである。このサイトは今年から会員制のaspara.asahi.comに移って敷居が高くなった感がある。
 色んなウェブサイトでコラムや掲示板投稿を読む時、『儲かった』とか、『成功した』『幸せ〜』なんて自慢話的記事は書く側は嬉しくて自慢したくて書くのであろうが、読む側としてはあまり面白味がないものだ。それよりも、『大損した』とか『大失敗』『酷い目に遭った』というたぐいの記事は面白いものである。
 「メディカル漂流記」もドクターでありながら無謀と思えるような氏の冒険的な行動や懐かしい過去のトピックを綴ったところに興味や共感を感じたのであった。

 ビジネスセミナーでも成功例を披露するものが殆どであり、何かに成功した話題の人が講師になったりするとどっと聴講者が集まるのである。だが、成功例を真似して同じように成功することは滅多にない。なぜなら、真似しても総ての条件を成功例と同じにするのは不可能なのである。事業の成功例が典型的なもので、成功例が発表される頃にはその事業の開始タイミングが大きく遅れた時期なので、成功例を聞いて同じ事業を起こそうとしても、その時は既に多くの競合相手が参入済みで、悲惨な結果になるだけである。
 ところが失敗例を披露するセミナーは滅多に無い。大体失敗した人は自身の失敗を人に曝したくないであろうから講師のなり手がいないのである。たまに、成功例のセミナーの中で、講師が過去の失敗例を話すことがある。こんな時は成功の話よりも失敗の話の方が興味深く聞け、「あの状況下でこのような事をやってはいけないのか」と大いに参考になるのである。
 『成功例を真似ても99%成功しないが、失敗例を真似れば99%失敗する』ものである。だから、できるだけ多くの他人の失敗例を参考にして同じ徹を踏まないようにすれば、自分の失敗の可能性を減らすことが出来るのだ。

 『他人の不幸は蜜の味』といわれるのは、正にこれなのだ。『他人の幸せ』はうらやましく癪にさわるが、『他人の不幸』は自分はあいつより幸せだという優越感を味わえると共に、『あんな事をすると不幸になるからやらないようにしよう』と、自分への戒めが出来、大いに役立つからである。『蜜の味』と言うのは一見不謹慎な表現ではあるが、『為になる』と解釈するのが良いだろう。冒頭のコラム「メディカル漂流記」の作者はドクターであり、ご自分の病気の深刻さを認識されながらも、亡くなる直前までコラムに投稿されて、まさに命をかけておられたのであるが(肝臓ガンで亡くなられたが、コラムには度々酒を飲んだ場面が登場した。)、筆者にとってこの『他人の不幸』を『蜜』として、わが身に役立てたいと思うのである。

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