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★★ アナレンマって? ★★ 2004年10月31日

 2004年10月27日 あるギリシャ人男性が、『アナレンマ』の撮影に成功した。アナレンマとは、1年間同じ時刻に太陽を撮影し続けることで現われる8の字形の軌道のことだが、撮影には忍耐や入念な事前の計画、そして何より運が必要とされる。この男性の成功は世界で8人目の快挙だ。

 というニュースがあった。

 『アナレンマ(Analemma)』という言葉をこの歳になって初めて知った。天文関係か占星術の専門用語でさほど新しい言葉ではないようであるが、どこの辞書にも出て来ない。Google検索すると、45件出てきた。Googleで45件しかないということは、あまり一般的ではないようである。

 筆者は写真と宇宙も含めた自然に興味を持っているので、面白いなと思い『アナレンマ』について調べてみた。同じ地点から見た同時刻の太陽の位置を1年間に亘って記録すると8の字の形になる。これが『アナレンマ』と呼ばれる。この形は太陽が正午になっても真南に位置する(南中)とは限らず、少しのズレ(均時差)があることによって生じる。均時差とは地球の公転軌道が楕円であることと、自転軸が傾いていることの2つの理由により太陽が南中位置に戻ってくる時間が24時間より長くなったり、短くなったりするために生じる。北半球では8の字の下の方が長くなる。南半球ではこれが逆になるが、南半球での撮影例はない。日時計では、真太陽時と時計時(平均時)の差があるため、8の字型の目盛りを設けて時計時が判るようにしたものもあるようだ。

 写真で『アナレンマ』をとるためには1年間に1枚だけフィルムを使う。そして写された太陽の数プラス1回シャッターを切る(プラス1回は風景を写すため)。そして1年後に多重露光されたフィルムを現像すると、細長い8の字の形になる。実際撮影された写真を載せたいが、無断使用するわけにいかないので、イメージ図を載せた。実際の写真はここhttp://www.wired.com/news/images/0,2334,65428-15337,00.html(いつまであるかわらないが)を参照されたい。

 冒頭のニュースの男性(アイオマミティス氏)はこれを時間を変えた9枚もの撮影に成功したとのことである。なぜ快挙かというと、悪天候、カメラのぶれ、電池切れ、シャッター時間のずれ、などの障害が起り易いし、その前に、どこで、どの方向に向けて、どんな画角で、どんなフィルターを使って、露出はどうするかなど準備段階の試行錯誤も大変であろうと考えられるからである。本当に正確な『アナレンマ写真』が撮れたら、地球の自転軸の傾きや公転軌道、公転速度の変化などを知ることができ、学術的にも価値があるそうである。

 確かに銀塩フィルム写真に撮るのは大変であろうが、デジタルカメラとパソコンと組み合わせて機器をしっかり設置し、太陽が出ているかどうかを検知して撮影窓が自動で開くような設備を電源の確保できる場所に作れば、無人で撮影できそうである。多重露光でなくても撮影した数十枚のデジタル写真をソフトを使って合成すれば、完璧なアナレンマ写真が作れそうである。ただ、設備にかなり金がかかりそうであり、地震もあるだろうし1年間ブレが無い状態で保守できるかどうか保証はない。

 多少8の字が崩れたものでも良しとするなら毎日曜日の同じ時刻に同じ場所へ出掛けて何か固定された風景を目印として、この目印がファインダーの一定位置に合うようにして、濃いND(減光)フィルターを通して、太陽だけが白い点で周りの空が黒くなる露出で、時報に合わせてシャッターを切れば、撮影は可能かも知れない。しかし、東京近辺では例えば日曜日の正午の晴天率は60%前後でしょうか。どんなに粘り強く頑張っても歯抜けのアナレンマになってしまいそうだ。

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