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★★ レコード業界甘ったれるな! ★★ 2004年10月10日

 政府はアジアなどから音楽CD等の「逆輸入」を一定期間禁止する「音楽レコード等の還流防止措置」を盛り込んだ著作権法改正案を閣議決定した。今国会の成立を目指し、2005年1月から施行される見通しらしい。安い逆輸入CDが大量に流入することを警戒した音楽業界の要望を受け入れた形で、安価な逆輸入CDが無くなり、実質、高価品押しつけになるので、消費者の不満もくすぶるようである。

 今回の改正案は、日本のレコード会社からライセンスを受けて海外で作られた邦楽CDが、日本国内で売られることを禁止するものである。禁止するには「日本販売禁止」と明示し、かつ、国内製CDより大幅に安いことが条件になっている。アジアで邦楽人気が高まり、現地でのライセンス生産が進んできており、価格は現地の経済水準に合わせて設定される結果、日本より大幅に安く、これが日本に逆輸入されると、国内制作盤が売れなくなってきているのだ。

 これは国の基本政策に真っ向から反対するような法改正であり、特定業界の要請で、あっさりなされてしまうというのはどういうことだろう。国の政策は、規制緩和を行い、競争を促して、小売価格を引き下げ、内外価格差を是正し、国民経済に利益をもたらすということである。しかし、このレコード輸入権の創設というのは、内外価格差を法律の力で維持することで、アメリカの約2倍という価格差を全ての国民に押しつけることになってしまう。他の「規制」と異なり、小売価格の高値維持による特定業者の保護以外のなにものでもないのだ。

 その他の問題として、同改正案が成立すると、欧米先進国のレコード会社にも適用される。例えば、米国のレコード会社が、米国制作盤のCDなども日本国内で販売を禁止するという対応を取れば、現在レコード店で販売されている輸入洋楽CDも販売できなくなる恐れがある。同じ楽曲の洋楽CDでも海外盤は、ライセンスを受けて日本国内で生産されているものより2、3割は安いことが多い。それが輸入禁止で店頭から消えるかもしれないわけだ。

 そもそも輸入盤が安すぎるというのではなく、国内盤が高すぎるのだ。CDコストの大部分は録音や宣伝などにかかる費用であって、空ディスクの価格は1枚数十円にすぎない。逆輸入で2000円で売れるなら、これが正常価格ではないか。市場経済では当たり前の価格競争をやるべきである。自動車や家電など製造業の大半はこうした逆輸入と競争し、価格を下げたり海外生産に移行したりして生き残っている。このため国内空洞化が問題になっているのだ。なのにレコード業界だけが、世の中の変化や経済情勢の変化に自助努力で対応しようとせず、法規制で保護を求めている形である。レコード業界自体が対抗して逆輸入で安く販売すればよいのではないか。甘ったれるな!と言いたい。

 この問題、新聞ではけっこう大きく扱われたが、テレビではあまり取り上げられていない。テレビは新聞よりも音楽業界との関係が深いので、あまり騒ぎたくないようである。CDをよく買う若者層で新聞を読む人が減っているためか、このことを知っている人も少ないような気がする。

 今や映画ではCGで生きた人間と区別がつかないほどリアルに作ることが可能になってきており、将来は俳優が不要になるのではないかと危惧されたりしている。音声も合成か肉声かの区別がつかないレベルまで進歩してきた。ならば歌だっていずれ合成で歌わせることも可能になるだろう。そうなれば、歌手業だって成り立たなくなる可能性があるのだ。だからといって、音声合成で歌を歌わせてはいけないというわけにはいかない。音楽業界も○○さんの声とか演歌調編曲源といった合成用の素材を販売するような形に変わっていくことになるかも知れない。どんな業界も世の中の変化で栄枯盛衰があるもので、これに対応して変化できなければ滅びるしかないのだ。

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