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★★ 絹糸を作る ★★
2025年01月11日

 時々テレビで絹糸を作る過程が放映されるが、その時思い出される事がある。

 筆者が小学生の頃、学習の一環でカイコを飼うのが流行った時期があった。兄妹4人だったが、弟はまだ幼かったので姉兄私の3人がカイコを飼ったものである。

 ご存じの通りカイコは桑の葉しか食べない。ところ当時の我が家には桑の木が無かったので、毎日桑の木があるお宅へ葉を採らせてもらいに通ったものである。カイコの孵化はちょうど梅雨の時期で幼虫時期は約1ヶ月間続くが、雨もようの中桑の葉採取は小学低学年の筆者にとってこれは大変な仕事であった。そこで兄姉の要望もあってどこからか桑の木の苗を貰ってきて我が家の庭の日当たりの良い場所に植えることになったのだが、その桑の木が大きくなって葉が採れるようになった頃にはもうカイコを飼うのには飽きて(充分学習しきって)やめていたように思う。

 兄妹3人で育てたカイコの繭が沢山できた時、おばあちゃんが「糸にしてやろか」と言ってくれた。祖母はかつて絹糸を作った経験があり、家には絹糸を作る道具も残っていたのだ。
(この写真はネットから借用しました)

 繭を10個ほど、七輪の炭火にかけた鍋で沸かした湯に入れると糸がほぐれてくる。これを箸を使ってひとまとめにして手回しの巻きとり機に付けてくるくると巻きとっていくのだ。繭はくるくる回りながらほぐれてゆく。かなり長かったように思った。あまり手間はかけなかったので出来あがった絹糸は少し黄みがかっていたが、正に絹糸であった。

 筆者はこのようにして、絹糸の作り方を実際に学んだものである。ところが自分の息子達にはこんな教え方は出来なかった。息子が小さい頃にはテレビで学習出来たし、大きくなった頃にはパソコンでインターネット検索すれば映像でも学習できるようになり便利になったものである。しかし、筆者が祖母から教わった絹糸の作り方は80歳になった今でもしっかりと覚えていて、人生で何らかの役に立ってきたように思える。


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