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★★ 野鳥観察場所を明かさないことの是非 ★★ 2004年3月26日
私がデジスコを持って野鳥撮影するようになって1年が経った。野鳥の多くは季節により生息場所を移動するのだが、私のよく行く観察場所における野鳥の変遷については一通りわかるようになった。
私が野鳥撮影を始めたのは昨年の4月中旬であり、冬鳥が姿を消し、木の葉が茂って留鳥でも見えなくなる時期であった。それまでは、殆ど野鳥に関心を持ってなかったので、どこにどんな野鳥がいるのかさっぱり判らず、有名な探鳥地に出掛けてみるものの、1羽の野鳥にも全く出会えないということも多かった。
インターネットで色々探してみたものの、「この時期にここへ行けば確実にこの鳥が見られる」という親切な情報は殆どなかった。インターネットの写真掲示板には、その時々のすばらしい野鳥写真が掲載されているが、どこで撮ったかについては、記載されないことが多く、たとえ記載されることがあっても「I温泉」「GG山」「Iの森」「A公園」等など、隠語になっている。仲間同士では個々にメールで情報交換がなされている様子であり、隠語で充分通じるらしく、彼らに独占されているようで、余計悔しい思いをしたものである。またこのような写真掲示板には、「場所を特定する情報を書いてはいけない」と明記されているので、うっかりはっきり地名を書いてしまう人がいたりすると、注意の猛攻撃をうけるのである。
日本野鳥の会の考え方としては、「野鳥を通じて自然保護に関心を持つ人を増やしたい」ということであるし、掲示板仲間としても、「同じ趣味仲間を増やしたい」考えがあると思う。野鳥公園などは、宣伝してまで多くの人の来園を誘っているのである。なのに、どうして、場所を教えないのかな?と疑問を覚える。
場所を明かさない理由として、
@インターネットのような大規模通信網で公開すると、どっと人が押し寄せて、その地の環境が荒されたり、付近の住民への迷惑になる。
A珍しい野鳥では、密猟者の餌食になる危険性がある。
B営巣や雛に近付くと子育てを放棄してしまうから。
といわれる。なるほど、そうだろうが、@については、本当に人が押し寄せて困る場所なら伏せておいてよいと思うが、野鳥公園など、よく人が行く場所については伏せる必要は無いのではないか。よい機会なのだから、バードウォッチングのマナーをそこでよく説いておけば、マナーの良い仲間を増やせるのではないだろうか。Aについては、悪質密猟者はバーダーの上をいく情報通であって、伏せたから被害が出ないという性質のものでは無いと思う。むしろ、公開して、一般の善良なバードウォッチャーが居る方が密猟防止に効果があるのではないかと思う。Bについては確かにそうだ。だけど営巣状態を撮ったり、それを掲載すること自体許されないはずである。警戒心の強い野鳥は遊歩道などから見える場所には巣作りしないはず。掲載者自身がロープをまたいで踏み込んで撮影したことを暴露していることになるのだ。強いて許すなら「50m以上離れた場所から撮りました」という注釈が必要だろう。
新聞やテレビで紹介されると、ほんとうに大勢の人が集まる。我が家の近くの秋が瀬公園は有名な探鳥地であり、2,3月にはヒレンジャクがやってくる。私も数回見に行ったが、異常と思われるほど大勢のバーダーが集まり、ヒレンジャクの来るヤドリギに向かって双眼鏡や望遠鏡、デジスコや超望遠カメラを並べていた。でも、これだけ大勢いるとみんなよくマナーを心得て、野鳥から充分な距離をおいて、静かに楽しんでいた。
同じ秋が瀬公園のカワセミのいる池で、先日嫌な光景を見た。カワセミがホバリング・ダイビングを盛んにやっているのを、4,5人のカメラマン仲間が狙っていた。そこへ、チュウサギがやってきたのであるが、撮影の邪魔になったのであろうか、カメラマンの1人がサギに向かって大きな石を投げつけて追い払った。彼は自分の撮影成果だけが目的で、愛鳥なんて気持ちは全く無いのだろう。いかにも高価そうな機材を持っているカメラマンにこのような輩がいるように見えるのは、貧弱な機材しか持てない私のヒガミだろうか。早く元を取りたい気持ちが強いのであろうと勘ぐる。ヤラセを仕掛けるのもそのような奴だ。
探鳥地に集まる人々には、バードウォッチングをして美しい野鳥を写真にも留めたいという人達と、人受けする写真を撮りたい人達が混在している。そして、写真だけが目的の人達の中に、マナーの悪い輩が混ざっているのである。
情報非公開について、愚痴っぽいことも書いたが、1年間関心を持って見ていると、野鳥の情報はそれなりに入手できるものであるとわかった。上述の隠語も、例えば「GG山」は権現山の水場だとわかった。これはインターネット上のあらゆる情報を関連付けて辿っていくと判るのである。掲載者がどの辺りに住んでいるのかは、その人のコメントやHPのプロフィールなどから判ってくる。そして、その人がよく行きそうなフィールドの見当が付く。そして、GGの名前が付く山を探すと「権現山」に辿りつく。HPでフィールドノートを公開しているバードウォッチャーが多いので、これも大いに参考になる。結局、マナーの良いバーダーも、悪い奴も、熱心ならそれなりに情報収集しているので、場所を隠してもあまり意味がないようである。大勢集まった方が相互牽制が働いて、マナーが守られるのではないだろうか。隠すよりも、場所公開と同時に、写真目的でマナーの悪い輩へのマナー教育を掲載するとよいのではないだろうか。