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★★ 一人暮らしの高齢者になってしまった ★★
2022年01月28日

 筆者は一昨年(2020年)悪性リンパ腫の治療を受け、寛解に至ったのだが、その間看病など世話をしてくれた妻に2021年7月末膵臓がんが見つかり、何の治療もされないまま、1ヶ月の緩和ケア入院の末11月7日あっけなく亡くなってしまった。
 夫婦はいつかは死別することになるのは分かってはいたが、人生100年時代ではあと20年程先のことと思い、全く心の準備が出来ていないままその時を迎えてしまったのである。
 その結果、筆者は一人暮らしの高齢者になってしまったのだ。これは夫婦にとって全くの想定外で、悪性リンパ腫に罹った夫が先に逝くはずで、念のため遺言書を書いたり、遺影用写真を撮ったり、生活費用クレジットカードは妻が主会員で筆者は家族会員としていたのだ。ETCカードも妻名義にしていた。

 想定外の事態になったとしても、この事実に対応していかなければならない。クレジットカードは自分が主会員のカードとし、ETCカードも付けてもらった。その自分のカードを使い始めれば済むのかと言うとそれでは済まない。電気、ガス、水道など公共料金の支払い、携帯電話、インターネット、固定電話、テレビ、NHK、アマゾンなどネットショッピングの支払いなど生活に必要なすべての支払いが妻が主会員であるクレジットカード払いになっていたのだ。これらを調べてすべて新しい自分のクレジットカードに切り替える手続きを行うことになった。

 妻のカードにはほぼ4万円分、家族会員である筆者のカードにはほぼ1万円分のポイントが溜まっていたので、買い物はまずポイントを消化する形で行なうことになった。ポイントを使う方法もさっぱり分からなかったので、ネットで調べながらとなった。

 このような切り替え作業の他、資産管理や日常生活のほぼすべてが妻まかせであったのが、すべて自分でやらなければならなくなったのだ。「家事」と一言で言えば簡単だが、掃除・洗濯・買物・布団干し・ゴミ出し、最も大変で時間を費やすのが毎日の3度の食事だ。季節の変わり目には寝具や衣類、扇風機・コタツ・ガスストーブの切り替えも必要だ。これら全部一人でやることになり、それだけで毎日が終わってしまう。合間を見つけてウォーキングに出掛けたりもするが、他に何も出来ないし、何かやりたいとも思わなくなってしまった。

 老後の目標が突然無くなってしまったのだ。我々老夫婦は、10年前に「老夫婦の終の棲家」として家を建て替え、二人で海外も含めて旅行したりで老後を楽しむのが目標だったのだ。これまでの10年間はその目標に向かってあちらこちら旅行をするなど楽しんで来たのであるが、その半ばで突然目標を失ってしまったのだ。

 一人でも旅行に行けば、と言われるかも知れないが、一人だとどこにも行きたいと思えない。これまで趣味としてきた山の写真や山野草や野鳥の写真も、全く撮りたいと思わなくなってしまったのだ。

 妻に先立たれた男性は心が落ち着くまで3年はかかるらしい。筆者はそれまで生きながらえているのだろうか?生きて行くには新たな老後の目標を持たなければならないだろう。見つかるのかな?

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