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★★ もう新聞は要らないのかな ★★ 2004年3月20日

 私の世代(1944年生れ)は、活字文化の中で育ってきたので、小さい頃から、活字を読むことが多く、情報の収集源は新聞、雑誌、といった活字が主体であった。小学生の頃は子供新聞や「小学○年生」という雑誌を読んでいた。その習慣で、情報源の多様化した現在でも毎朝、テレビのニュースを聞きながら、新聞に目を通している。

 ところが、今はもう所帯を持って別々に暮らしている息子達は新聞を購読していない。彼らの学生時代も新聞を読んでいるのを殆ど見ていない。リクルート活動で必要だからと、日経新聞を取ったが、それすら殆ど読んでいなかった。「社会人になるのだから、新聞ぐらい読んでおけよ」と言ってみたが、「ニュース等の情報はテレビやインターネットで充分入手できる」という。なるほど、自分自身も、今や新聞を読んで初めて知る情報は少ない。殆どはテレビで見た情報の再確認といった形で読んでいる。新聞は、ニュースを報じるだけでなく、解説やコラムでそれに対する意見も述べられており、自分の時間の中で、読みながらじっくり考えることができるという良さがあるのであるが、この部分が、インターネットで充分置き換えられるようになった。というより、新聞の数倍の情報がインターネットで自分の時間の中で入手できるようになったのである。

 インターネットでは殆どすべてのプロバイダーのHPでニュースを取り扱っており、そこからのリンクで次々深く関連する情報へ掘り下げて見ることができる。プロバイダーのニュースサイトの情報源の多くは新聞社であり、その新聞社のサイトへ行けば、新聞に載っている記事そのものを読むことができる。記事の中で、関心のある事項があれば、即、Google等で検索することにより調べられる。

 こうなると、「新聞なんて要らないな」ということになる。新聞社のサイトでは、主要記事だけであったり要約に留まるものが多い。新聞に掲載されている総てを読みたい場合は有料の会員になる必要があるが、料金は新聞の購読料よりは安い。新聞は紙代、印刷代、配達代が含まれるので高くなるのは当然である。と、ゆうことで、今、真剣に新聞の購読は止めようかと考えている。ただ、そうした場合に、ちょっと気になるのが、毎朝、髭をそりながら、又朝飯を食べながら、新聞を読むのであるが、これをインターネットに変えるとなると、パソコンを立ち上げたり、マウスのクリック作業は、「ながら」でどの程度できるのか、箸とマウスを何回も持ち替えてやらないといけないような不便さがあるのではないだろうか。

 ん?と、ここで気が付いた。テレビや新聞の情報とインターネットの情報では受け取り方が根本的に違うのだ。テレビはスイッチを入れるだけで情報は流れてくる。チャンネルを選ぶという選択肢はあるものの、提供される番組から選ぶだけである。新聞も提供される内容は受身であり、自分の欲しい情報だけを指定することなんてできない。テレビも新聞も相手から提供されるのをただ受けるだけである。必ずしも欲しい情報を受けられるとは限らない。欲しくない情報もいっぱい混ざっている。だから、朝飯を食べながら何も操作しないで見られるのである。新聞の場合もパッと横に広げて、見出しを拾い読みし、興味のある記事を読むだけでよいのである。ところが、インタネットで情報を取るには、テレビや新聞のような、「操作なし」では提供してくれない。自分の欲しい情報を自分で探して取りに行かないといけないのだ。だからマウス操作やキーボードでの入力操作が必要なのである。

 インターネットの世界では情報の入手方法が従来の情報源と全く異なるのだ。従来はただ口を開けて待っておれば、情報は飛び込んできた。ただし、自分にとって不必要な情報も勝手に入ってきたのであるが。インターネットでは口を開いただけでは何も入ってこない。自分から必要な情報を取りに行かなければならない。なぜ、そうなるのか。それは、インターネットの情報は膨大過ぎるからである。そしてそれが、すべて正しい情報とは限らない。テレビや新聞のように、信頼できる発信者ばかりではなく、猫も杓子も、善人も悪人も、情報発信者になっているのである。だから、自己責任で正しいかどうかを判断しなければならない。ある程度基礎知識があり、人生経験を積んだ者なら判断ができるかも知れないが、経験の無い子供がインターネットだけで情報入手するようになったらどうなるのだろうか。検索したら、たまたま間違った情報源がヒットされてしまい、それを信じてしまうということも起りうるのである。出会い系サイトで変な相手と知り合い、悪の道に入ったり、犯罪に遭って殺されたりするケースも、何が正しいかの判断ができなかった結果ではないだろうか。

 インターネットは情報源としてすばらしいものであるが、始まったばかりと言っていいほどでまだまだ急速な発展をしているものである。利用の仕方についての教育など益々必要になるのではないかと考えさせられる。

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