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★★ ヤラセ野鳥撮影 ★★ 2004年1月17日

 近くの公園で、ルリビタキが居るという情報があり、行ってみた。そこでルリビタキが出てくるのを待っている人の話によると、あるカメラマンが写真を撮るために、背景など撮影条件の良い場所に止まり木を立て、その近くに「ミルワーム」という餌を撒いて撮影しているとのこと。ルリビタキは一度その味を占めると、また、そこに餌がないか、時々様子をみるために出て来るようになり、そこをその他カメラマンが狙って待っているのだそうです。これは、「ヤラセ」そのものではないでしょうか。だからその場での撮影は止めて別の場所に移動した。野鳥の水場でも撮影用の人工的な水場を作ったり、自然の水場でも撮影し易い位置に止まり木が設置してあったりして、何か嫌な思いをすることがある。

 カワセミが魚を獲るダイビングの瞬間を撮った写真やビデオ映像を見たことがある。その時はただ、すごいな、と思って見ていたのであるが、自分が野鳥撮影をやるようになってみると、ダイビングの瞬間を構図良く撮影するなんて殆ど奇跡に近いことだと分かった。そして、それを時々目にするということは、あの悪名高い「ザル」(ザルに餌の小魚を泳がせ、そこにカワセミを飛び込ませる)をやっているとしか思えないのである。カワセミのダイビングの写真を得意そうに見せたり、ホームページに載せる人がいたら、その裏には「ザル」の犠牲になって傷ついたカワセミがいるのだと嫌悪感を覚えるようになった。
 有名写真家が写真の色彩を豊かにしたり、季節感を持たせたりするために餌付けやいわゆるヤラセをすることがあるらしい。カワセミがきれいな花の近くに止まっていたり、きれいな紅葉をバックにしたヤマセミの写真等など、あまりにもきれい過ぎて不自然さを感じることがある。そんなヤラセで得た写真を売る事が、彼らの仕事なら、彼らは詐欺師としかいいようがない。そんな演出をしたいなら、何も野鳥を使わないで、きれいな人間のモデルを撮っていてくれれば罪はないのであるが・・・

 次に挙げるような写真は、写真コンテストは勿論、ホームページへの掲載から排除されるべきで、もし、そのような写真があれば作者は軽蔑されるような状況が早く浸透するよう望みたい。
1.撮影を目的とした餌付けや植物の伐採、添付など所謂ヤラセ行為のある写真
2.野鳥に危害を与えるようなストロボ撮影や営巣時の近接撮影などによる写真

 市や町で白鳥などに餌付けしているところもある。お客さんに鳥を近くで見てもらうために餌付けをするのは、けっして自然保護ではなく、観光誘致の発想であろう。これを宣伝し、集まってくる観光客にみやげ物や農産物を売店で売って稼いでいるのである。

 一方、餌付けには、人が野生生物に接触する機会を与えたり、動物愛護や自然保護を志すきっかけを与える効果も期待できるので、自然環境への悪影響を出来るだけ少なくすると言う条件付きで,餌付けを容認する、と言う考え方もあります。
 野鳥だけでなく、サルやシカなど野生生物全体にいえることであろうが、かっては野生生物保護のためと称して餌付けがなされたことがあったが、結局は弊害が出てきて、最近は餌を与えてはいけないことになってきた。

 直接餌をやるのではなく、鳥の好きな実のなる木を植えるのも、樹種の偏りが大きければ、特定の野鳥種を増やす結果に繋がりかねず、問題であるという考え方もあります。さらに、庭の餌台、ビオトープ、環境復元作業など、「餌付けの是非」の論議だけでは済まされないグレーゾーンの問題も多いようです。

 結局は、自然はあくまで人間の手を入れない自然のままにしておくのがベストであり、自然破壊するような土木工事はしないで、森や林を残しておくというのが、人間のできる自然への配慮ではないでしょうか。本来、人間は山にも入らず、野生生物にも近づかないというのが自然にとってはよいのであろうが、我々が自然を楽しませてもらうためには、しっかりルールを守って、自然に配慮して接するということで許されるのではないでしょうか。野鳥を楽しむのであれば、遊歩道からは踏み出さず、野鳥から充分な距離をとって観察したり、写真を撮ったりすればよいのである。小鳥を一眼レフカメラに600mm程度の望遠レンズを付けて撮ろうとすれば、小鳥に警戒心を与える程度近づかないと満足できる大きさに撮れないが、3000mm超でも撮れるデジスコなら、充分離れた位置から遊歩道から踏み出さずに撮れるのである。

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