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★★ 8mmフィルムのDVDダビング ★★ 2010年10月14日

 三十数年前に筆者の子供が生まれた時、写真だけでなく、動画でも記録してやろうと、当時としては高価であったサウンド付8mmカメラと映写機、それにフィルム編集用器具一式を揃えたのである。今なら2万円程度の安いデジカメでもフルハイビジョンのステレオ音声付動画が撮れるのであるが、当時は家庭用ビデオカメラもまだ市販されていない時代であり、サウンド付8mmカメラは家庭向きとしては最高の手段であったのである。しかし、これらを使ったのは子供が幼稚園に行く頃までの5年間くらいであったろうか、それも5年目頃には既に家庭用ビデオカメラ(肩に担ぐ大きなものであったが)が普及しており、8mmフィルム用カメラでは「古〜い」と思われそうでちょっと「かっこ悪い」思いをしながら撮ったものである。

 そんなことで撮った8mmフィルムが編集済み5号リールで10本ほど溜まっている。1本が約30分なので全部見れば5時間ものの映画である。これらをどれくらい観たかというと、3回くらいだろうか。子供が小さかった頃の8mmフィルムを観なおす最終の機会は子供の結婚式とかその直後に結婚相手やそのご両親に観ていただくことであろう。その最終の機会で映写会をやろうとしたところ、映写機が動かない。ゴムベルトが固くなって滑って空回りしているのだ。フィルム映写機というのは正にメカの塊である 。現代の機器のようなマイコンなど想像もできなかった時代の機械である。それが20年以上も押入れにしまってあったのだからゴムベルトは劣化し、回転部軸受けの油も固くなっていたしかたのないことである。これに油を注したり滑り止めを塗ったりで何とか動くようにしたが、何とレンズが黴で全体が白く濁っており映像が霞んでしまっていた。この時は「こうこうしかじかで」と弁解しながら霞んだ映像を観てもらったのである。

 それからまた何年も経ったのであるが、筆者夫婦も歳老いてきたので、あまり身の回りの物が在りすぎると、あの世へ行った時に遺族が処分に苦労するので、持ち物の整理を始めた次第である。この中に結構かさばる映写機と8mmフィルムがあるのだ。そこで8mmフィルムをDVD化して子供に渡してしまおうということにしたのだ。実は子供の成長記録としてのアルバムも何冊もあり嵩張ったので数年前にすべてスキャナーを使ってデジタル化し、CD−Rに入れ、紙のアルバムは廃棄したのである。8mmフィルムはどうしょうかと考え、調べたところ8mmフィルム−DVDダビングサービスがあった。方法はフレームバイフレームと呼ばれる方法で1コマづつデジタルカメラで撮影してムービー化するもので、品質的には最良の方法でハイビジョンにもできる。おそらく専用の機械を使うのであろうが、1本あたり数万円もするようである。10本を依頼すると数十万円になる勘定だ。サウンドが入るともっと高いかもしれない。観るか観ないかわからないものにそんなに金をかけるわけにもいかない。もう一つの方法に8mmフィルムを映写機で映写しながら、デジタルムービーカメラで撮影する方法がある。これでは映像のちらつきなどが入り品質的にはフレームバイフレームよりかなり劣るが、8mm映写機で映した映像と見比べて大差ないものである。これだと業者に委託して1本あたり1万円程度でできそうである。が、それでも10万円ほどかかりそうだ。だけど映写機で映したものをカメラで撮るなら、手持ちのコンパクトデジカメを使って自分ででもできそうである。

 そこで、実験してみた。何とか観られる程度の画質で撮れそうである。映写機のレンズが曇っているのでこれを壊してもよいつもりでレンズをばらしてみた。専用工具がないので金属部品をペンチで挟んで回すなどかなり強引なことをしてでもばらすことができた。レンズの曇りを無水アルコールを付けた綿棒でごしごし擦ったら何とかきれいに透明なレンズに戻った。

 いよいよ本番で8mm音声付映写機を使ったデジタル化作業に入った。壁にA4の白紙をスクリーン代りに貼り、1m弱離れてスクリーンに向かって映写機とデジカメをV字型で並べた。部屋を暗くして映写しながらデジカメで動画撮影である。デジカメの撮影解像度はVGA(640×480)とした。一応撮れたのであるが、パソコンで再生してみるといくつか問題が見つかった。

1)映写した映像に綿ホコリ状のゴミが付く。付いたゴミはなかなか自然にとれない。こんな場合はやり直しで、ゴミをブロアーで取り除くことになる。

2)映写機のカタカタという音が入ってしまう。サウンド音声が大きければ問題ないが、音声が途絶えるとカタカタ音が大きくなるのである。これはデジカメの集音感度が自動調節され、音声が途絶えると感度アップしてカタカタ音まで拾ってしまうのである。・・・これは映写機で映写すればいつも出る音なので仕方が無い。むしろいにしえの映写機の音を後世に伝えるということで「よし」とした。

3)映像に横縞が入る。これは8mmフィルムが18フレーム/秒であるのに対し、デジカメ動画は30フレーム/秒のため、起こる現象である。ちなみに映写機のスピードを24フレーム/秒にすると横縞は全く気にならないが、動きが不自然に速くなり、音声が甲高くなってしまうのだ。これは20フレーム/秒程度だと横縞も動きも音声もあまり気にならない程度になることがわかった。20フレーム/秒というモードは持っていないので、映写機モーターのプーリーに輪ゴムを巻いて調整することにした。

4)デジカメをオートフォーカスにしておくと、途中でAFが働いて却ってピンボケにしてしまうことがあるため、マニュアルフォーカスで撮影した。また、デジカメにどの機種を使うかということではFinePixHS-10を採用した。NikonD90やLUMIX DMC-TZ10では連続撮影時間がVGAで20分という制約があるが5号リールの8mmフィルムは30分弱あり撮りきれないのだ。また、自動露出機能が鋭敏だと、画面がちらついてしまう。

5)デジカメのファイル形式がMOVのため、テレビ用DVDプレイヤーで再生できない。パソコンならQuickTimeで再生できる。これをテレビで見えるようにするためにはソフトを使って変換しなければならない。これはネットでフリーソフトを探しDVD Flickというのを見つけダウンロードした。これを使ってDVD1枚あたり約2時間かけてテレビ用のDVDを焼くことができた。ただし、このソフトには癖があって、映像にフェードアウトなどの真っ黒な部分が混ざっていると、そのうしろ部分がカットされてしまう。そこで事前にMOVファイルの真っ黒部分を編集で取り除いておかなければならないのだ。

 以上のような試行錯誤しながら何とか8mmフィルム10本分をDVD−R3枚に納めることができた。デジタルになっているのでブルーレイへの変換も可能であろう。しかし、動画の作業には時間がかかる。順調でも撮影で5時間、DVD作成に6時間である。これが試行錯誤で何回もやりなおしたのと、途中で映写機のランプ(EFP-12V-100W)が切れてネットで取り寄せるというハプニングもあった。それで何日かかったかはご想像におまかせする。毎日が暇な筆者だからできたことである。

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