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★★ ペンキは黒が長持ちする ★★ 2010年07月14日

 大掃除をしていたら、我が家のあちらこちらの外部の木部が腐っていたり、鉄部が錆びて穴が空いてボロボロになっているのに気付いた。これらには皆塗装してあったが塗膜は剥がれてしまっていた。これら駄目になっている場所はどこも日当たりのよい場所ばかりである。日当たりの悪い場所は何ともなっていない。塗装がやられたのは直射日光の紫外線によるものであるのは明らかである。塗装部分以外ではクーラーの室外機につながる冷媒パイプの断熱材やそれを巻いているビニールテープも日の当たる部分が無くなっている。紫外線は化学線とも呼ばれ、化学作用が強く、有機物を強力に分解するのである。その分解力の強力さを実感させられたのである。

 建材として腐食や劣化の無いタイルやステンレスなど無機物に取り替えればこのような心配は少ないのであろうが、ものすごく高価なものになってしまう。そこで我が家のような安普請では、建材の木部や鉄部を保護して長持ちさせるにはやはり塗装が最も一般的であり、経済的な手段である。この塗装に使う材料である塗料であるが、これも有機物である合成樹脂が主体のため、紫外線により分解され、劣化してひび割れ、剥がれ、消耗が起こるのである。従って塗装も1年に一度程度のタッチアップ補修と10年に一度程度の全面塗り替えが必要ということになる。特に1年に一度程度のタッチアップ補修がきちんとなされておれば、基材は何十年経っても劣化や腐食を起こすことはないと言えるのである。

 我が家を振り返ってみればここ10年近く塗装のタッチアップなどしてなかったので腐ったり錆が進行したのはし方の無いことと諦めるしかないのである。遅れ馳せながら、ホームセンターで塗料を買ってきて補修を行ったのである。木部の腐った部分は切り取って新しい木材をボンドで接着し、塗装した。鉄部の錆びた部分は錆を落とし、穴の空いた所もあるが、まだ強度が残っていそうなので、そのまま塗装して錆がそれ以上進行しないようにした。

 昔と違って近年は塗料や塗装の進歩も大きく貢献し、塗膜は随分長持ちするようになった。自動車を取り上げて見た場合、最近の自動車は傷が付かない限り、塗装の艶がひけたり錆びたりすることは殆ど無くなった。しかし、一昔前の自動車はワックスがけなどの手入れをせずに雨ざらしにしておくと数年で錆が出てぼろぼろになったものである。特にメタリックシルバー色の自動車はひどいものであり、たとえまめにワックスがけしていても屋根やボンネットの艶は短期で無くなり色ムラが出たものである。メタリックシルバー色の塗料というのはクリヤー樹脂とアルミ顔料でできているため、クリヤー樹脂が直接の紫外線だけでなく、アルミ顔料で反射された紫外線と何重にも紫外線にさらされ、しかも塗膜内部まで紫外線が入っていくために短期で劣化したのである。世に出て間がない頃の自動車の色は殆どが黒色であった。これはなぜかというと、黒色は顔料にカーボンブラックを使っており、同じ樹脂を使った塗料なら他の色よりも格段に紫外線に強く長持ちしたからである。カーボンそのものが紫外線に強いだけでなく、紫外線を殆ど吸収して反射しないので、塗膜の内部にまで紫外線が侵入しないのである。 ではこの逆の白色は紫外線に弱いのではないかと懸念されるであろう。確かに同じ樹脂成分の塗料なら黒と白を比較すると白の方が弱いが、青や赤や黄よりはずーっと紫外線に強いのである。それは白色顔料に酸化チタンTiO2が使われているからである。酸化チタンというのは可視光は反射するが紫外線は吸収するのである。日焼け止めクリームが白っぽいのは酸化チタンが使われているからである。従って白色も黒色同様の原理で紫外線に強いのである。ただし、同じ酸化チタンでも結晶構造の異なるアナターゼ型と呼ばれるものは紫外線に対する触媒作用が強く周囲の有機物を強力に分解してしまうので、これを塗料に使うと、短期間で樹脂成分を分解してしまい、表面が白い粉状になるチョーキング現象が起こってしまうのである。塗料に使われる酸化チタンはこのような活性の低いルチル型が使われ、さらに活性を抑えるためのコーティングが施されたものである。

 で、筆者が補修に使った塗料の色はというと、鉄部は勿論黒色にした。しかし、さすがに景観上木部まで黒色にするわけにはいかず、チョコレート色にした次第である。

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