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★★ 彩湖での釣り違反者との攻防 ★★ 2010年02月12日

 筆者がウォーキング、野鳥撮影、野草の花撮影で頻繁に行く彩湖は建設当初から釣り禁止になっている。ところが、この規則に違反して釣りをする者が後を絶たない。彩湖は魚が豊富なようであり、岸辺から見ても巨大なコイのような魚がうようよ泳いでいる。水鳥の餌になる魚も多いので、水鳥がたくさん飛来してくる。彩湖は荒川の遊水池の役割をしており、通常荒川本流から水を取り込んだり、放水したりし、また大雨の時には越流堤を越えて荒川本流の水が直接流れ込むようになっている。このため、荒川の魚類がそのまま彩湖にもいることになるのだ。先日違反釣り人のプラスチック容器を見たら数十匹のワカサギが入っていた。これが違反してまで釣りをする理由のようである。違反釣り人は若者だけではなく、充分物事の善悪分別のできる初老の年代までいる。

 「釣り禁止」なのに「釣りをする者がいる」ため、これを管理する役所との間で攻防が繰り返されてきた。筆者は彩湖が造られる以前からよく行っていたので、この状況をすべて見てきている。彩湖が造られる以前は多くの池や水溜りが散在する葦原や砂利原で、それぞれの池で釣り糸を垂らす人が居た。この頃の「釣りを楽しむ権利」を主張する釣り人も居るようであるが、もう年代が代わっているはずであり、これは言えないだろう。彩湖が完成して何年か経った頃から管理橋で釣りをする人が増えてきた。園内放送で「彩湖での釣りは禁止です」と流されても、公然と釣りは続けられ、土日には親子連れも含め一時は管理橋にびっしり釣り人が並ぶ程になったこともある。そこで、まず「釣り禁止」の張り紙がされたが、少し人数が減った程度。次には橋の欄干の上にフェンスが張られた。しかし、このフェンスの上から釣り竿を出して釣りを続ける者が居た。そしてその次には橋の下の湖面に網が張られた。網に釣り針が引っかかるようにしたのだ。これは少し抑止効果があったのか少しは釣り人は減った。しかし、この工事がなされた時に筆者が心配したのは、網に釣り針が引っかかったら、湖に釣り針や釣り糸が散乱して野鳥などに悪影響があるのではないかということであった。湖面の網は多少効果はあったが、釣り人はゼロにはならず、釣り針や釣り糸散乱という環境悪化のためか、いつの間にか網は撤去されていた。そうすると、また違反釣り人は増えていった。そしてこの違反釣りがテレビでもとりあげられたりして大きな問題になってきたのだ。先日テレビカメラとレポーターらしき人達が違反釣り人取材のために張り込んでいるのを見た。この時は察知されたのか、取材は空振りになったようである。そしてついに写真のような大きなフェンスを取り付けるという工事がなされた。しかし、この工事は筆者をはじめ来園者には不評である。一番大きいのは「景観が台無しになった」ことである。筆者は管理橋を入れた彩湖の風景写真を撮ることもあるのだが、こんな見苦しいフェンスが付いたら写真作品にはならないのだ。また、橋に設けられた6箇所のテラスすべてがフェンスで遮断されて使えなくなったことである。橋の上からの眺めはフェンスの金網を通してしか見られなくなってしまった。そして、何よりもこれだけの犠牲を払って、かなりの公金を使っての工事なのに、その効果はあるのか。ということであるが、筆者は昨日、このフェンスで遮断されたテラスの中で悠々と釣りをしている者を目撃してしまった。高くとても乗り越えられないフェンスであるが、このフェンス設計者の裏をかいて、フェンスの下をくぐったか、または橋のたもとからフェンスの外側をテラスまで欄干を辿って行ったようである。これを見た時点で、この攻防戦は「管理者側の負け」の判定となってしまった。さらに考えられるのは、フェンスの金網の網目が大きいので、網目から釣竿を出したり、釣った魚を取り込むこともできそうである。この工事は景観を台無しにしただけで、違反釣り抑止効果は完璧ではないと言えそうである。

 このような一連の違反者との攻防を見てきて、筆者が思うには管理者側の状況把握の甘さ、と対策の甘さがある。筆者ほどの頻度で状況を見ておれば、フェンスを設置するというような馬鹿げた対策は採らないはずである。フェンス設置というのは何年か前に一度失敗しているのに、また金をかけて同じ失敗をしようとしているのだ。徹底した恒久的対策を採るなら監視カメラを設置し、カメラで釣り人が見つかったら即係員が行って止めさせるのが最も効果があると思われる。当然ながら、「釣りは禁止です。監視カメラ稼動中。違反を発見したら係員が駆けつけます」程度の標示は行い、カメラは容易に破壊されない配慮をして設置することである。もう一つの有効な対策として、カメラの代わりに橋を通行する一般来園者の協力をいただく事である。「釣りは禁止です。もし、釣りをしている人を見つけたら、管理センターにご連絡いただけるようご協力ください。電話:123-456-7890 メール:kkkk@ssss.go.jp]」のような標示をすることだ。殆どの人は携帯電話器を持っているので、違反釣り人から見えない所へ行って電話やメールで連絡してくれる人もいるはずだ。筆者もそうであるが、違反釣り人を見つけても直接注意すると逆切れされて、暴力行為を受ける危険性もあるので直接注意する勇気は無いのだ。特に違反承知で釣りをしている輩なのだから、犯罪承知で暴力をふるいかねないのだ。おそらく、監視カメラでも一般来園者への協力依頼も、標示を見ただけで違反釣りはしなくなると思われる。「違反釣り」は生活がかかっているものではなく、単なる「楽しみ」だけである。釣りのためにフェンスを破る行為はもしかしたら奴らの一種の「楽しみ」になってしまうかもしれないが、「監視されている」という感覚は「楽しみ」そのものを打ち消すものであるから、このケースにおいては絶大な効果があると思われるのである。

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《追記》
 上記のフェンスは2010年5月26日に撤去された。フェンス設置後は橋の上からの釣りは減ったが、「違反釣り」は彩湖岸辺に移動分散し、休日では5,6人、平日でも2,3人の釣り人がいた。国交省のパトロールカーが車のスピーカーで注意しても、その場は止める振りはするものの、パトロールカーが居なくなると平然と「違反釣り」を続けていた。3ヶ月間の橋へのフェンス設置はいったい何だったのだろう?