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★★ ワープロでの漢字誤変換 ★★ 2003年12月13日

 今や、文書作成でワープロ機能を使うのは当たり前になってしまった。私はペン書きが極端に下手で自分にしか読めない字になってしまい、時には自分でも読めない事もある始末。だから私の手書き手帳は総て暗号化されているのと同じで、人に見られても安心という代物であった。でも、文書を書くのは自分が読む為よりも人に伝えるのが主目的であるので、読めない字では役にたたない。というようなことで、私は誰よりも早くワープロを使うようになった。まだパソコンが普及する前の何百万円もするワープロ専用機時代からワープロを使いこなしていたのである。

 ワープロを使うと、人に渡す文書はきれいに印刷されたものになり、字の下手さを卑下しなくて済む。尤も最近は紙に印刷することすら少なくなり、人に渡す文書は殆どメールの添付ファイルになり、保存文書はサーバーに収まるようになっている。他人の作った文書を読むのも総てパソコン画面になってしまったので、文字の読み辛さというものは無くなった。また、漢字も、書けなくても変換されて出てくるので、これも便利である。文書の作り方も手書きに比べてかなり変わった。手書き時代は全体の構成を考えてから書き始めることが多かったが、ワープロでは、とにかく思いつくままに文章を次々作っていく。そして、それらを並べ替えたり、追加、削除して全体を仕上げるような形で、編集が非常に楽になり、述べたい事の漏れも無くなった。

 以上は利点であるが、弊害も多い。一番の問題は漢字を書けなくなったことである。漢字というのは指が覚えており、意識しなくても指がかってに動いて書けたものである。それが、書かなくなったため、指の記憶はキーボードを打つ動きに変わってしまった。研修会等に出掛けてメモをとろうとした時に漢字が書けなくてひらがなで書いてしまう。まるで小学生低学年のメモである。もう一つの大きな弊害は漢字の誤変換である。日本語入力ツールはどんどん進歩して、前の文章との関連まで考慮して変換してくれるようになったので、普通の文書を作る場合には、変換キーを押して最初に出てくる漢字でOKというのも多くなった。その為か、変換された漢字をチェックせずにどんどん入力を続けてしまうようになる。そうすると、とんでもない意味の異なる漢字を使ってしまうことになるのである。もう一つ誤変換の原因がある。入力の時キーボードを見て画面をあまり見ていないからである。いわゆるブラインドタッチ(タッチタイピングともいう)なら、常に画面を見ているので、変換された文字を確認出来るのだが、キーボードばかりを見ていると結果の確認無しに入力を続けてしまうことになるのである。

 私は仕事で人の報告書(パソコンで入力されたもの)を読むことが多いのであるが、最近になって漢字の誤変換の多い事に気付いた。読んでいて前後の関連から正しい漢字は想像できるのであるが、どうも気分が悪い。入力する方も、「誤変換というのはよくある事だから許してもらえるだろう。言いたいことが伝わればそれでよいではないか」と気楽に入力し、読み直して修正しようとしないのである。社内文書なら「不注意な奴だな」で終わるが、同じような文書が社外にも出ているのではないかと思うと、会社のチェック体制の甘さを暴露しているようで気掛りでならない。最近のニュースに「入学試験問題で誤変換や誤入力があった為に問題の意味が判らず、全員を合格にした。」というような事もあり、とんでもない問題を起こしてしまうのである。紙に書く時代に育った私の世代でこの状態である。ワープロ時代に育っている現代の子供達が社会活動するようになるとどうなるのであろうか。日本語入力システムがもっと発達して、完璧な文書を作ってくれるのかも知れない。余計な心配であればよいのだが。

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