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★★ ホエールウォッチング ★★ 2009年04月01日

 沖縄でホエールウォッチングをしてきた。当ホームページ「山写真紀行」を運営する筆者にとって、「自然」という観点では興味深いクジラであるが、山ではクジラは見られない。「山くじら」は食べるための猪のことであり「自然賞賛」に反してしまう。クジラは海にしかいない。ということで「山写真紀行」に海の写真を掲載することになった次第である。なぜクジラかというと、家内がハワイ旅行でホエールウォッチングを体験してきたのであるが、クジラまでの距離が遠く、尾びれや背中を小さく見ただけで欲求不満状態で帰ってきたのがそもそもの理由である。その後、小笠原にホエールウォッチングに行こうとか、銚子でイルカウォッチングができるとか頻繁に口にするようになった。そしてついに、沖縄ではかなり高い確率でクジラが見られるということを知り、インターネットで沖縄のホエールウォッチングを検索させられた。それに続いてネット予約をするに至った次第である。

 沖縄のホエールウォッチングは、慶良間諸島周辺に毎年1月〜3月の間ザトウクジラが繁殖のためにやってくる。この間の遭遇率は98%ほどであり、全く見られなかったら料金を返還しますという開催会社もあるほどである。使われる船は30〜50人乗りの中型クルーザーである。これなら小回りよく走り回れるし、数多くのホエールウォッチングクルーザーがお互いに情報交換しながら運航しており、どれか1隻がクジラを発見すれば、皆そこへ集まってくるという仕組みだ。それでも海が荒れたり天候が悪いと出航できないので、4日間の沖縄滞在中に2回ホエールウォッチングできるスケジュールで出かけた次第である。

 1回目は沖縄到着日の午後にホエールウォッチングに参加した。少し風が強かったが天気は晴れ。他より少し遅く出発するクルーザーであったため、既に他のクルーザーがクジラを発見していたので、一直線でウォッチング現場へ向かった。先着4〜5隻のクルーザーに我々のクルーザーも加わった。クジラというのはいつも海面を泳ぎ回っているわけではない。海に潜って泳ぎ、時々息継ぎに海面にあがってくるというパターンである。一度潜ると次に現れるまで10分〜30分待たなければならないのだ。しかも次にどこに姿を現すかは判らない。この間スタッフの説明を聞きながら次に現れるのを探すのである。海面にあがると最初に「ブロー」と呼ばれるいわゆるクジラの潮吹きをするので判るのだ。この日は我々にとって非常に幸運にも「ブリーチング」というジャンプを何十回もしてくれた。まことに豪快でこれこそホエールウォッチングと言えるほど堪能できた次第である。

 2回目は親子クジラを間近で見ることができ、正に繁殖のためにこの辺りにやってくるということが理解できたものである。

 昔はここ沖縄でも捕鯨が盛んに行われて、ついには絶滅して1頭も来なくなってしまったとのこと。捕鯨禁止になってから徐々に戻ってきて今のようなホエールウォッチングが可能になったようである。沖縄にとって捕鯨とホエールウォッチングとどちらが儲かるかというと、明らかにホエールウォッチングの方が儲かっているように思える。ここで鯨を食べる話を出すのは可哀そうであるが、我々の子供時代は鯨肉でタンパク質を補って育ってきたものである。鯨1頭30tが1kg500円と仮定すると1千5百万円の価値となる。ではホエールウォッチングでは1隻あたり平均20人で午前午後10隻づつ出航して1人あたりの料金を4000円とすると、1日あたり160万円。ということは10日でほぼ捕鯨1頭分という単純計算になる。おそらく10日で1頭獲っていたらすぐに絶滅してしまうだろうから捕鯨継続は無理であろう。グリーンピースの味方をするわけではないが、捕鯨よりもホエールウォッチングの方がより大きく永続的な経済効果が得られるのである。「鯨を食うのは日本人の食習慣なのだから食習慣の異なる外国が干渉しないで欲しい」と考えていた筆者であるが、ホエールウォッチングで感動してからは「外国の反対を押し切って無理して南氷洋まで調査捕鯨に行かなくてもよいのではないか」とすっかり考え方が変わってしまった。

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