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★★ デジタル一眼レフの諸機能について ★★ 2008年12月19日

 ニコンのデジタル一眼レフのD90をほぼ発売と同時に購入した。それまで使ってきたのは同じニコンのD70で、これは普及型デジタル一眼レフの草分け時代のものであって、銀塩フィルム一眼レフカメラをデジタルに変えただけというようなものであった。従って銀塩写真と同等の写真を撮るのに必要な最低限の機能しか無かったものである。ところが、最近発売されているデジタル一眼レフは、写真を撮るのに有効な機能の向上と共に、コンパクトデジカメの初心者向け便利機能も取り込んだようなものも出てきて機能競争の感がある。その機能競争の最たるものを挙げてみた。

写真を撮るのに有効な機能向上としては、次のものが挙げられる。

1.高画素数化
 最近は1千万画素超が常識となり、コンパクトデジカメでさえ1千万画素超というものが出てきている。果たして写真としてどれくらいの画素数が必要なのかということになるのだが・・・。サービスサイズ程度に印刷するなら200万画素で充分。A4サイズに印刷する場合でも400万画素あれば足りる。最近の写真の鑑賞方法として一般的になっているパソコンでの鑑賞ならパソコンのモニター画面の画素数の80万画素程度あればよいのだ。ハイビジョンテレビで画面いっぱいに鮮明に見たい場合でも200万画素でよい。本当に1千万画素超が必要な場合としては、大きく印刷して写真展に出展するような場合とか、プロ写真家がカレンダー用とかポスター用に撮影する場合であろう。ただしプロならはじめから中判、大判というもっと高画素の高級機を使うだろうから普及型デジカメには1千万画素超というのはあまり必要性はなさそうである。一般的に同サイズの撮像素子なら画素数に反比例して感度が低下してノイズが増え画質が低下するものである。また高画素数だと画像処理に時間を要するようになり、また連写速度が低下したり、記録可能な撮影カット数が低下するという弊害も出る。筆者が600万画素のD70と1230万画素のD90を併用してパソコン画面で比較した限りでは、画素数の差による違いは全く感じない。ただひとつ良い点としては、トリミングの可能性が高まるということである。トリミングはすべきでないと主張する写真家も多いが、それは銀塩フィルム写真時代の話であって、個人で容易にトリミングができ、トリミングしても目だって画質が劣化しないのであればよいのではないかと筆者は考える。そうであれば、高画素化は望ましい大きな進歩であろう。少し変だなと思うのだが、トリミングを嫌う写真家が高画素化を賞賛している事である。

2.高感度化
 以前使っていたコンパクトデジカメではISOを100から200に上げただけで使い物にならない程にノイズが出たものである。D70では常用可能上限ISOは400であった。これがD90になると常用可能上限ISOは1600にまで向上した。これはすごいことである。というのは安価な暗いレンズでも使える。室内や夕方の暗い被写体も撮影できる。とか、従来よりも4段階もシャッター速度を速くできる等で、スポーツや動物の撮影が非常にやり易くなったし、野草などの撮影でも多少風で揺れてもブレずに撮れるなど、撮影可能範囲が大きく広がったということである。
D90では自動ISOで上限設定や、ISOを自動で変える最低シャッター速度を決められる。この機能は暗い森の中での野鳥撮影ではかなり有効で重宝している。

3.高速連写化
 連写はスポーツや動物の撮影には不可欠と言って良いほどの機能である。銀塩フィルムではもったいなくて、とかフィルム1本での撮影可能枚数の上限が36枚といった制限からあまり使えなかった機能であるが、デジタルでは記録メディアの大容量化低価格化で非常に有効に使えるようになり、動画の一部を切り取るような感じで絶妙のシャッターチャンスを活かせるようになった。記録メディアの最大容量は32GBという規格のMAXまで市販されるに至った。これを使っての連写速度は最大画素数で毎秒3,5,10コマといったところまで可能になってきている。メカニカルなミラーやシャッターの動きを伴う連写速度は10コマでそろそろ限界かも知れない。メカを伴わない連写ならカシオのEXILIM EX-F1のように6Mピクセルで毎秒60コマが実現しており、将来的におそらく毎秒千コマレベルまでは可能になりそうである。

4.手ブレ補正機能
 これも実に有効な機能である。昔写真のボケの最大の原因はピンボケであると言われ、これがオートフォーカス機能で解消された。ボケの2番目の原因はブレであり、写真家は大きな三脚を持ち歩いたものである。これが、手ブレ補正機能で三脚無しで撮れるようになれば、機動性が大きく向上する。今回筆者の購入したD90本体には手ブレ補正機能は持っていないが、一緒に購入したレンズのタムロンのB003では優れた手ブレ補正機能を備えており、望遠端270mmの手持ち撮影でもピタッと止ってくれるので、本当に三脚無しが可能なのである。大きな三脚が不要ということは、機動性も高まり気軽にどこへでも出掛けられるのであり、特に山へいくことの多い筆者にとっては非常にありがたい機能である。

5.AFポイント数
 AFポイント数の多少が採りあげられることが多いが、実際には9点あれば充分であろう。これが必要な撮影スタイルは三脚を使ってガッチリ構図を決めた後にAF点を選ぶようなケースであって、手持ちでの普通の撮影ではシャッターボタン半押しでAFロックしてから最終構図を決めるやり方であるのであまり多点は必要ないものである。

 筆者はよく野鳥撮影をするが、当然ながら超望遠で撮影する。これには三脚とレリーズケーブルが不可欠であった。ところが、手ブレ補正機能付きの超望遠レンズを使い、高速連写することで三脚無しの手持ちで野鳥撮影ができるようになった。2.の高感度化も享受し、ISOを高めにしておくことで高速シャッターも可能、1.で挙げた高画素化の恩恵も享受し、大きくトリミングすることで、小さな野鳥もそこそこ見える大きさに撮ることができるようになった。これで何が良くなったかというと、野鳥を見つけた瞬間、ほぼ1秒以内にシャッターを切れるため、撮り逃がしがかなり減ったことと、持ち運ぶ機材がうんと軽量化したことである。

5.ダスト対策
 レンズ交換時に発生しやすいローパスフィルターのダスト問題はこれでかなり減少することであろう。折角のレンズ交換カメラで交換レンズを持ちながらダスト付着を恐れて現場でのレンズ交換を極力控えるということが多かったものである。

コンパクトデジカメ機能
1.ライブビュー機能
 この機能を賞賛する人がいるようであるが、ライブビューを本当に使った上で賞賛しているのか疑問に思える。コンパクトデジカメから光学ファインダーが無くなったのはコストダウン目的のメーカー都合だと言い切れる。光学ファインダーは撮影用レンズのズームと合わせるためにかなり複雑なファインダー用レンズとメカニカルな機構を必要とするからだ。ユーザーは仕方なく液晶モニターを使っているとしか言えない。実際屋外で液晶モニターはものすごく見づらいものでモニターに何が映っているのかさっぱり見えないこともある。大体の構図を感覚で見ているに過ぎないのだ。筆者はDiMARGE7でEVFと液晶モニターの両方が使えるタイプを数年間使ったが、液晶モニターで撮影したことは殆ど無い。ライブビュー機能はファインダーを覗けないハイアングルやローアングルでの撮影の時に無いよりは有った方がいいかなといった程度の機能である。

2.モニター画面の角度可変化
 これも前述の通り、ファインダーを覗けないハイアングルやローアングルでの撮影時に有った方がいいかなという程度であるが、却って壊しそうで不安な要素になってしまう。撮影結果の確認の際には全く必要性は感じない。

3.顔認識機能
 この機能はコンパクトデジカメのソフトがあったから有効利用しようとメーカーが取り入れたに過ぎないのではないだろうか。一眼レフを使おうというユーザーならAFやAEをどこに合わせるかはカメラ任せではなく自分で決められるものである。

4.液晶モニターの大型化
 これは結果確認には大きい方がいいという程度で、本当にピントがあっているかどうかは3インチのモニターでも確認はできない。屋外だと構図の確認にも無理がある。パソコンに画像を取り込んで、ピクセル等倍で見て初めて判定できるものである。大型化になって良いことと言えば、屋内や車内に戻ってからじっくり結果確認する時に多少細部まで見えるということであろう。

5.動画機能
 コンパクトデジカメの殆どの機種に付いている動画機能であるが、実際に使う機会は少ないものである。そんな機能を静止画撮影を主目的としたデジタル一眼に付けてどれくらいの価値があるのかという疑問もある。実際D90購入後約2ヶ月になるが、動画は2,3回試しに撮ってみた程度でそれが作品として後で楽しめるものではない。おそらく、メーカーとしてはデジタル一眼の機能競争で可能なものは何でも付けようということであろう。ユーザーの立場では無いよりは有る方が何かの機会に便利という程度であろう。

 1.3.5.の機能はソフトウエアで付加可能になるもので、ハードウエア的には操作ボタンが付いて基板の配線が変わる程度であろうから、これが付いたからといってカメラの原価が大きくアップすることは無いと思われる。

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