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★★ 物のバージョンアップ ★★ 2008年08月24日

 我々が日常使用する「物」は家具でも家電製品でも古くなったり壊れたりすると「廃棄」して「最新型の物」を購入するのが当たり前のようになっている。しかし、地球温暖化防止が叫ばれている今、「ちょっと待てよ!」ということになる。果たしてそのように使い捨てにしてよいのだろうかということである。大昔は物が壊れても修理して使い続けてきたではないか。と、言うことで最近は再び「修理」という考え方が見直され始めている。家具などは良い物を使い、壊れたり傷付いたりすれば修理して使い続けられ、一生ものどころか子や孫の代まで使い続けることもできるのである。 

 大昔からある家具ならそのような使い方ができるが、家電製品のような物ではどうかとふと考えてみた。家電製品の場合も一定期間なら壊れたら修理はできるが、その一定期間を超えると部品が無くなり修理不能になる。修理可能の物でも、修理よりも買い替えの方が安いという場合が多いのも考え方によっては「変」である。企業が新製品を売るために作り上げたシステムに乗せられてきたに過ぎないのではないだろうか。この先資源が枯渇すれば新しく物を作るにも原材料が無ければ高いものになる。最近の電子機器では希土類元素も使われ、これらは非常に入手困難になってきているとのこと。さらに古い物を廃棄するにも費用がかかるということになれば、「物を買い替える」ということが非常に高コストになる時代がすぐそこにやって来ているように思えてならない。 

 「物を買い替える」ことに高いコストがかかれば、当然「修理して使い続ける」ことに移っていくであろう。ところが、家電製品のような物はどんどん「高機能化」したり「省エネ化」したりしているものである。現状の修理だけでは元に戻すことはできても、「高機能化」や「省エネ化」を享受できない。そこで、これからの「物」は「バージョンアップ可能に作る」ことを考えなければならないのではないだろうか。最近のデジカメやビデオレコーダーといった電子機器ではファームウエア(ソフト)をバージョンアップすることにより不具合を修正したり、機能を追加したりできるようになっている。インターネット経由で新しいファームウエアを入手して入れ替えができるのである。 

 この考え方をファームウエアだけでなく部品にまで適用すれば、壊れた時に同じ部品に交換して修理するのではなく、最新の機能を持った部品に交換すれば、5年以上使った家電製品でも最新機種と同等の機能や省エネが可能になるというようにすることである。これらは、技術的にある程度定着した物について、50年は使い続けられる設計で物が造られるということである。例えば「電子レンジ」これは技術的にはほぼ固まった家電製品であろう。基本的には「加熱調理機」であって「マイクロ波を当てて食品を加熱する」機能と「オーブン」機能を持っているものが多い。これを今後50年間使えるように始めから設計された家電製品にするのである。制御はマイコンとソフトでなされているので、マイコンに著しい進歩があれば、これをカートリッジで交換可能にする。もちろんソフトはファームウエアのバージョンアップが可能とする。マイクロ波加熱だけでよい人にはその機能だけ付いたものを供給すればよい。後でオーブン機能を使いたくなった時にはオーブン機能のカートリッジを差し込めばよいという構造に造っておくのだ。蒸(むし)機能が欲しくなれば、蒸機能カートリッジを追加で差し込めばよいのだ。この電子レンジには始めから将来を見越して数個の機能追加用カートリッジ差込口が設けられているのだ。差込口は標準化され、メーカーが違っても問題なく付く。そのメーカー用のソフトを入れれば問題なく機能する。電子レンジ筐体は錆などが出ない材質で造られ、ボタンなども新機能に合わせて交換できる構造になっている。

  ここまで考えると、「なんだパソコンと同じだ」と思われるだろう。そうです。パソコンの考え方を総ての物に適用すればよいのです。丈夫な筐体に考えられる数個のインターフェースジャックが準備されており、そこに必要なカートリッジを取り付ければよいという構造だ。ボタン類もパソコンのキーボードのようなもので、機能の割り当てもできるようになっている。正に自作パソコンのように必要な機能だけを取り付けたり、壊れればそこだけを交換したり、新機能がでればカートリッジだけ交換する。「物のバージョンアップ」である。

  これからの家もそうであるが、その中で使う物も生涯あるいは代々まで発展を享受しながら使い続けられるようにしていくのが地球温暖化や資源枯渇を間近に直面している我々の責務ではないだろうか。使い捨ての時代は終わったのだ。

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