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★★ 著作権について思うこと ★★ 2008年05月06日

 インターネットでデジタル音楽データの配信が容易になったことや地上波デジタル放送の開始で、音声や映像デジタルデータのコピー問題が大きく取り上げられ、配信側と利用者側で大いにもめている。なぜもめるかというと、著作権法で認められた「私的利用のためのコピー」に関する部分である。音楽CDを買ってきて、オリジナルCDは傷つけないように大切に保存しておいて普段はコピーしたCDで聴く。とか、観れない時間帯のテレビ番組を録画しておいて、空いた時間にゆっくり鑑賞するというのは誰でもよくやることであって著作権法で認められた個人的利用のためのコピーである。ならば、何ももめることはないのであるが、世の中には違法なことをやってでも儲けようとする輩がおり、コピーしたCDやDVDを大量に作り、正規品より安く売って儲けようとするため、この防止策でもめているのである。・・・と思うかも知れないが、実はそうではない。違法コピーいわゆる海賊版は昔から存在し、奴らは闇のコピー手段を持っているのだ。市販の機器でコピーできなければ、闇用の機器を開発してしまうので、法律や規制とは無関係にコピーされるのである。元々取り締まりの対象になっていたから、そんなのを売る奴がおれば従来通り取り締まればよいのだ。問題は私的利用を逸脱して営利目的ではなく無償でネット配信したり、友達同士でやり取りするのが問題になっているのである。これも、アナログコピーの時代はコピーの度に品質低下するため、コピー回数におのずから限界があったが、デジタルでは何度コピーしても品質低下がないので、延々とコピー行為が行われてしまうということで、著作権所持者の利益機会喪失になるとのことである。

 ただここの論議で権利者として前面に出てくるのが大元の創作者ではなく、レコード会社とか映画会社、放送会社であるのが気になる。彼らは創作者ではない。創作者は作曲家や歌手、演奏者であったり、作家、俳優、映画監督、までであろう。録音、録画してCD化DVD化テープ化放映するのは単なる製造業ではないか。彼らが主張する利益機会喪失を通していたら、世の中の科学の進歩で衰退していく産業に皆当てはまってしまう気がする。家庭用プリンターで年賀状の印刷需要が減ったといって印刷業界がプリンターの販売差し止め請求はしていない。写真フィルムの需要が無くなるといってフィルム業界がデジカメの販売差し止め請求はしていない。なのに、ネットでの音楽配信に音楽レコード業界はCDが売れなくなるといちゃもんを付けている。

 優れた作品を創作する作曲家や歌手、演奏者、作家、俳優、映画監督が生計を立てるに足る報酬を受ける権利は当然なので著作権法で守らなければならないが、レコード会社や映画会社、放送会社の利益機会喪失は守る必要はない。世の中の進歩に合わせて自分達の業態を変えていくべきであり、合わせられなければ倒産すればよいのである。大体今の彼らは儲け過ぎているように思える。儲けすぎているから金持ち向の世の中で発言力も強いのであろう。そんな業界の利益を消費者の「私的利用」の権利を犠牲にしてまで守る必要はない。

 著作権の存続期間も変だ。創作者の創作活動のためなのだから、創作者が亡くなれば権利はそこまででよいはずである。それなのに、映画会社がどんどん著作権存続期間を延ばそうとするのはどういうことか。優れた特許権でも20年間しか権利はないのである。個人財産も保有者が亡くなれば高額相続税で存続できないのだ。どうも、著作権法は当初の法の目的を超えた適用がなされているように思えてならない。

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