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★★ 写真とビデオ ★★ 2008年04月13日

 筆者は孫がいる年代であるが、筆者に最初の子供が産まれた時、成長記録を動画として残してやりたいと思い、当時の最新技術であった音声付8mmカメラと映写機を買った。どちらも8万いくらかであり合計で16万円以上、そして編集機材も買い足すなどで、当時の給与レベルから考えても大変な投資をしたものである。ところが、これらが活躍できたのはほんの数年で上の子が幼稚園に入るまでであった。家庭用ビデオカメラが普及して、フィルム式8mmカメラを回すと「古るーい」と囁かれそうなのを気にしながら無理して5年くらいは使ったように思う。

 そんな経験があるのに、孫が生まれた時には「これで成長記録を残してやって頂戴」と誕生祝いとしてビデオカメラをプレゼントしているのである。このビデオカメラはテープに記録する方式で、孫が幼稚園に入園する今ではもう「古るーい」と囁かれそうである。もう使ってないかも知れない。今のビデオはどうかというと、フルハイビジョンを大容量メモリーカードに記録するビデオカメラが全盛である。

 ビデオカメラというのは春と秋しか売れないらしい。入園・入学式と運動会用に子供の親や祖父母が買うのだ。その他の時季で買う人がおれば、子供や孫が産まれた人だろう。これほどビデオカメラというのは購入動機が限定されているのである。旅行などでビデオを撮っている人を見掛けるが、彼らは子供のために買ったビデオカメラがたまたま手元に有ったから持ってきたということであろう。

 ビデオカメラに対し、スチルカメラ(普通の写真を撮るカメラ)は記録を残すというビデオカメラと似た用途であるものの、かなり異なる。写真を趣味とし、風景とかスナップ写真を撮る人は多い。新規購入動機も子供が産まれたということよりも、定年退職したので、どこか出掛けるにも手ぶらでは格好がつかないのでカメラでもぶら下げていこうかという人も多い。観光地でも三脚にカメラをセットして仰々しくシャッターを切っている人は多いが、三脚にビデオカメラをセットして撮影している人はテレビ局の人くらいである。たまには見掛けるが本当に少ない。

 写真とビデオはどちらも画像記録を残すものであるが、方や一瞬を留めた静止画であり、もう一方は動画である。記録としては動画の方が圧倒的に情報量は豊富であり優れているはずである。それならば、皆が動画であるビデオにシフトしても良さそうである。最近のデジカメには殆ど動画機能も付いているので、静止画よりも動画が主体になっても良さそうなものである。数年前のビデオやデジカメ付属の動画は見るに耐えないぼやけたものであった。しかし、最近の動画は画質がかなり向上し、動画からキャプチャーした静止画でも写真と見分けが付かないほど高画質になっている。写真を新聞や週刊誌に例えれば、ビデオはテレビである。我々は日常、新聞や週刊誌よりも圧倒的にテレビを観る時間が長い。それだけ情報量の多い映像の方を求めているのである。なのに、なぜ我々自身が撮影するのは動画よりも静止画なのだろうか?

 最近の自分自身の動向からその理由が見えてきた。筆者は一応写真を趣味としており、デジタル一眼レフを愛用し、よく写真を撮っている。デジタル一眼レフになって変わってきたことは、撮影枚数が圧倒的に増えたことである。カメラ自身の性能が良くなり、起動は一瞬、連写も1秒間に数枚撮れるようになった。メモリーメディアの容量は増え、何千枚もの撮影が可能になった。バッテリーも千枚とか2千枚持つようになった。このため、撮影パターンが変わり、じっくり構図を考えて撮るよりも、シャッターを切りながら、あるいは連写しながら構図を変えていくというようになってきた。これで撮影そのものは楽になり、後で「こうしておけば良かったのに」というような後悔は少なくなったように思える。ところが、である。家に帰ってからが大変になってきた。パソコンに取り込むのにすごく時間がかかるようになってしまった。1度の旅行分を取り込むのに20〜30分もかかるのである。そして取り込み終わった後、不要なものを消す作業も大変、何時間もかかるのである。そして気に入った「良い作品」を選ぶ作業にはもっともっと時間がかかるのである。

 もうお分かりと思うが、写真でこれだけの作業が必要なのである。これがビデオとなるとどうだろう。フルハイビジョンとなるとデータ取り込みにはものすごい時間がかかるし、これを編集しようとすると実際の撮影時間の数倍は要することになる。子供の運動会のビデオを数日かけて編集するなら、親馬鹿を発揮してできないこともないが、自分の旅行とか、花見のビデオをきれいに編集しようとすると、1日分の編集に数日かけることになり、本当に編集自体を趣味にしない限りできることではない。結果の楽しみ方を考えてみても同様のことが言える。写真なら好きな時にアルバムを引き出して好きな部分だけを好きな時間だけ見ることはできる。パソコンで見るにしても、同様である。ところが、ビデオだと、例えデジタル化して頭だしは簡単とは言っても見るにはそれだけの時間がかかる。忙しい現代人には合わないようである。たまに結婚式のビデオを見せられることがあるが、テレビのニュース番組のように、5〜10秒にまとめてあればよいが、殆ど編集していない結婚式の場面を長々と見せられたらたまったものではない。かといって嫌な顔はできないので、「わー花嫁さんきれいね」なんてお世辞を言いながら見せられるのである。そうなると、「よし、自分もビデオ撮影を趣味にしよう」なんて決心するわけないよねー。

 これが写真とビデオの違い。写真を趣味にする人は多いのに、なぜビデオを趣味にする人がそれほど多くないのかという最大の理由になるようである。この先、ビデオの編集がうんと楽になり、あるいは編集しなくても、見たい場面だけサッと見れるようなソフトや機器が登場すれば、また話は変わってくるかもしれない。

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