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★★ 「初値ミク」はレコード界の脅威になるか ★★ 2007年10月26日

 「初音ミク」って筆者のような「オジン」には無関係のように思われるかも知れないが、筆者は「いよいよ出てきたね」っと、非常に関心を持っている。「初音ミク」をご存知でない方のために、「初音ミク」って何?というのを先に説明しておこう。これは『歌手の代わりに歌を歌ってくれるパソコンソフト』の商品名だというのが最も判り易いだろう。楽器の代わりに楽器の音を合成して演奏する「電子楽器」というのはかなり以前から存在した。キーをたたけば、ピアノの音で演奏したり、トランペットの音で演奏したり、予めプログラミングしておいた曲を演奏できるのである。

 近年になって、人の音声を出す技術がかなり進歩し、カーナビでもきれいな女性の声で(選べば男性の声も可能だが)案内してくれる。そこで上記電子楽器の音を音声合成で作れば、歌声になるのは当然であり、近い内にどんな歌でも歌わせるようにできると思っていたら、その通りになったということである。音源は完全な合成ではなく声優の「藤田 咲」さんの声が使われているから人間が歌うのと遜色ない歌声になるのだ。サンプル歌声を聴いてみたが、へたくそなアイドル歌手よりよほどうまく、音程がはずれることはない。充分歌として楽しめるレベルである。今のところアニメっぽいイメージが強いが、もう少し進歩させれば、プロの歌手並みに歌わせることも可能になるだろう。

 このソフトはユーザーが自分で作詞、作曲してパソコンに歌わせるというものであるが、「ニコニコ動画」に作品がアップされ、その品質の高さで話題になり、ソフトの売上も上がっているようである。

 筆者は以前「レコード業界あまったれるな」というコラムの中で、いずれこのようなものが出てきて、歌手は不要になる旨を書いたが、いよいよ現実化してきたのである。これからは、誰でも作詞作曲してバーチャルで映像付きで歌わせることができるようになる。ということは、歌の供給源がうんと広がるのである。ほんとうに上手い歌手しか歌手としてやっていけないだろう。素人でもちょっとした才能があればヒット曲を作れるだろう。著作権に胡坐をかいているレコードなんて買う必要が無くなる。素人の作詞・作曲したヒット曲をネットを通じて安価に入手(素人なら無償で提供するかも知れない)できるのである。音源を変えれば音痴な人でも自分の声でプロ並みの歌を歌わせることだってできるのだ。

 さあ、この先レコード業界はどうしますかね。真剣に業態変化を考えなければならない時期にきているのだ。この「初音ミク」を某テレビ局が採りあげた時、「まずい」とでも思ったのか、まったく話題をはぐらかした構成にし、「超オタクの遊び」風にしてしまったために、大ブーイングが起きたようである。テレビ業界は「まずい」と考えずに、むしろ「初音ミクを使った作品コンクール」を放映するくらいに考え方を変えるべきではないだろうか。

 この「初音ミク」を使った作品がネットに多く出回っているようだが、その多くが既存の歌のようである。自分で作詞作曲したオリジナル作品を投稿するならよいが、他人の作詞作曲した歌を投稿するのは著作権法違反である。『リアル』な作品になってしまうだけに、著作権に胡坐をかく業界がうるさく、これらソフトの発展に釘をさしてくるだろう。個人で楽しむなら良いが、ネットに投稿するなら、是非自分で作詞作曲したオリジナル作品か、既に著作権の消滅した大昔の歌で楽しんでもらいたいものである。

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