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★★ 最近のデジカメ ★★ 2007年01月20日

 もう既にカメラと言えばデジカメが常識化してしまった。カメラメーカーもフィルムカメラの生産は次々中止している。カメラ売り場のフィルムカメラはどこか片隅に追いやられてしまった。

 フィルムカメラからデジカメへの移行は予想外に短期間であった。数年前の『銀塩かデジカメかの論争』は一体何だったんだろうと思えるほどである。当時「写真は絶対銀塩だ」と言い張っていた方も、おそらく今ではデジタル一眼を使っておられるのではないでしょうか。確かに2〜3年前までは銀塩の方が優れている面も多かったように思われるが、デジカメの進歩は著しく、画素数をとっても銀塩35mmフィルムに相当すると言われる画素数1600万画素に到達してしまったのである。発色を云々しても、デジカメではソフトでかなり融通が利くので銀塩式よりも自由度が高く、自分の思い通りの色に近づけることができるのである。どうやら10万円台デジタル一眼の出現と画素数の1000万画素超というのが大きな転機であったようで、これを機にかつての銀塩派をもデジタルに鞍替えさせたように思える。

 デジカメになると、撮影スタイルが一変する。最も大きく変るのが、『フィルム代、現像代不要』ということと、『フィルム交換作業が不要』である。これは撮影枚数の増加につながる。それも始めの内は2〜3倍という程度であるが、その内10〜20倍という桁違いの枚数になるのである。フィルムの場合はどこかに撮影に出掛ければ100〜300枚というところであろうが、それもかなりの金額になる。当然ながら、じっくり構図を確認し、露出やボケ加減を熟考して決めた上でシャッターを切ったのであろうが、今やデジカメではメディア容量は上は8GBまでになっており、最高画質が得られるRAW形式で保存してもCF1枚あたり8百枚は撮れるし、JPG形式ならその数倍も撮れる計算になる。最近のデジタル一眼ではバッテリーも1000枚以上持つようになっているので、予備を1つ持っておれば何の心配もなく撮れるのである。毎秒3〜5枚もの連写も可能なので、シャッターチャンスを待つことなく連写を続ければ、1/100くらいの確率で良いのが混ざるだろうということになる。ただし、こんな撮り方をすれば、当然ながら、後で良い物を選んで不要なものを削除するという作業に撮影以上の時間がかかってしまうのである。よく言われるデジカメなら現場で確認できるというのは、実際にはあまり効果は期待できない。モニター画面が大きくなってきたとはいえ、明るい屋外で1.5〜2インチ10〜20万画素の液晶モニターを見たのでは、ピントの良し悪しや露出の良し悪しは殆ど判らず、余程大きくはずしたものしか判定できないものである。とにかく撮っておいて、パソコンに取り込んでからじっくり選り分けるということになるわけである。

 最近のカメラは高倍率ズームが常識になってきた。通の方は単焦点より劣ると言われるが、大きく印刷しない限り、パソコン画面で見る程度であれば、高倍率ズームでもまあまあの画質で撮れるものである。そうなるとレンズ交換式と言えどもレンズ交換不要ということになる。また、フィルム式カメラでは出来得なかった画像センサーによるブレ防止というのも使えるようになったのである。オートフォーカス技術の進歩した現在では、写真のボケの大半がブレボケであるが、これも、三脚無しの撮影でもOKということになってくるのである。

 これは高画素化と相俟ってフレーミングをトリミングでカバーするとか、超望遠もトリミングで可能にするといったことになる。17〜200mmの高倍率ズームレンズを使えば、35mm判換算28〜300mmの広角から超望遠の写真が撮れるのであるが、1000万画素超のデジカメなら、最大3倍ズーム分程度はトリミングで望遠化(理屈上はデジタルズーム)でき、最大900mmの超望遠と同等の大きさまでトリミング可能と言うことになるのである。「そんなの駄目駄目」とおっしゃる向きもあるでしょうが、作品の鑑賞手段がパソコンなら、パソコンできれいに鑑賞できる画質を保持できる範囲ならそれでもいいのではないかということになるのである。写真展でも大判プリントされた展示に加えて、ディスプレイ画面でスライドショウ形式での写真展示をしている所も見られるようになってきた。

 どれを取っても、パソコンを使った後処理のウエイトが高くなるということになる。発色の調整、明るさ補正、トリミングなど、後処理も作品作りの一環となるので、デジカメを楽しむにはパソコンの後処理も楽しんでできなければ本当に写真を楽しめないことになるのかも知れない。写真を撮るのは好きだけれど、パソコン作業は苦痛と思われる方は従来の銀塩カメラと同様、現場でじっくり考えてじっくり構えて厳選した作品を撮られるのもこれまたひとつの撮影スタイルでしょう。しかし、かつて現像があがってきた後、ルーペを使って作品の選別作業を楽しんだのが、パソコンを使った大画面での作品選別作業に変わり以前よりもずっと楽に作業ができるように変ってきたのも事実である。

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