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★★ 金持ちの金持ちによる金持ちのための政治 ★★ 2006年12月16日

 厚生労働省は11月29日、国費ベースで約2兆円の生活保護費を来年度予算で400億円削減する方針を固めた。一人親の家庭の給付に一律上乗せしている「母子加算」を3年で段階的に廃止する。

 格差社会が云々されているのに、実態はまさに「金持ちの金持ちによる金持ちのための政治」というような状況になって益々格差拡大の方向である。国は途方もない借金を抱えて財政立て直しをしなければならない状況に追い込まれており、立て直し策を模索しているが、その策は主にもの言えない弱いもの、貧乏人に向けられていると言える。それほど財政が逼迫しているのに企業に対しては減税すると言っている。弱い者には増税したり福祉を減らして、それを強い者への減税に充てようとしているのである。現状では弱い者=貧困層、強い者=富裕層と言える。

 増税するなら金持ちから税を取り、消費税も贅沢品だけにかけるべきだというのが常識的な考え方であるが、そんな常識は今の政治には無いようである。というか、政治に関わっている人たちは皆裕福な人たちばかりなので、貧しい人たちの状況や気持ちが理解できていないのであろう。税制の見直しなど何かやろうとするとき、意見を言えるのは裕福な人たちだけである。金持ちに増税すると言えば、たちまち大きな反対意見が出るし、議員なら選挙にも響くのでそんな政策はとれない。ところが貧乏人への増税をかかげても殆ど反応はない。マスコミでニュースを流したり、社説を書く人たちもどちらかというと裕福な人たちなので、義務的にさらりとニュースを流すだけで、大きく騒がないのである。実際課税最低限度額が下げられたが、殆ど騒がれることもなく施行されてしまった。対象になる低所得者や生活保護を受けなければ生活できない人たちには意見をいう機会も手段も無いのである。生活保護減額の法案が提出されたとしても新聞、テレビなどの報道を受ける手段をも持っていないケースも多く、施行されてはじめて「え!何で増税なの?」とか「何で支給が減ったの?」というのが実情ではないだろうか。

 「障害者自立促進法」もそうだ。名前だけ見れば障害者が自立できるようにリハビリへの補助を出してくれそうな好ましい法律のように見えるが、内容は全く逆の「障害者自立『阻害』法」であってリハビリなどの補助を減額するというのである。障害者で裕福な人なんて居ない。障害者はまともに働けないので充分な収入が得られないのが普通である。そこにリハビリや治療、補助具などの費用がかかるのであるから補助給付に頼らざるを得ないのである。補助を受けるだけの立場なので、あまり強く意見を言うこともできない。誰かが代弁して言わなければ行政側は平気の平左である。何が「自立促進」になるのであろうか。国民を騙しているということで告発できないものだろうかとまで考えてしまうほどである。

 かつての政治家はどん底の生活から這い上がってきたという人もいたが、最近は政治家二世が増えた。裕福に育った政治家では貧しい人たちを理解できなくなってしまったのではないだろうか。次の参議院議員選挙でも、立候補する人たちは皆裕福な人たちばかりであろう。本当に投票したい立候補者が見当たらないのでは、選挙で政治は変えられないということになってしまう。

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