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★★ ビジネスコミュニケーション ★★ 2006年08月03日

 携帯電話がすっかり普及しきった現在ではビジネスでも携帯電話が便利なため、社員に仕事用の携帯電話を貸与したり、個人携帯電話の社用使用を許して基本料金と社用使用した分の通話料を会社が支払うというケースが多くなった。

 昔はビジネスで電話する場合は会社の代表番号に電話し、交換手経由で話したい本人に繋いでもらうというのが一般的であった。その後はダイヤルインというのが流行り、社員一人に一台の電話器と電話番号が与えられて直接当人に電話を入れられるようになった。しかし、電話が必要な人ほどデスクに座っていることが少なく、ダイヤルインというのはあまり役立たず、留守番要員を増やさなければならないなどの問題が出るようになってしまったものである。

 ところが、携帯電話だと相手がどこに居ようと連絡が可能になった。電車や車での移動中でも、商談中でも、病気で欠勤していても連絡ができてしまうのである。さすがに電車や商談中では大声で会話できないので、かけてみて相手が出られない状況であることがわかるとメールで連絡ということになる。

 ビジネスコミュニケーションは携帯電話とメールで随分便利になったものである。ところが、変なところで弊害が出ている。会社では大部屋で部署ごとにデスクの島を作って部長や課長が全員を見渡せる場所に座って仕事をするというのが今も大勢である。以前は部課長は部下の電話は話が聞こえてくるので会話状況が大体掴めたものである。部下の誰がどのお客さんと商談を進めているかとか、クレームなどが起こるとすぐに分かったものである。
 「ちょっと君、今の電話の件、もう少し詳しく報告してよ。」
といった具合であった。

 ところが携帯電話やメールが主体になると、何となく伝わってきていた部下の仕事状況が全く分からなくなったのである。会社にいても携帯にかかってきたら、廊下に出て話をするので何も聞こえてこない。増してメールでのやり取りは全く分からないのである。かっての部課長は部下を見渡せる席で常時部下の動きを把握していたのが、いつの間にか『○○○桟敷』に座らされてしまったのと同じ状況になってしまったのである。そして情報はというと、部下との直接対話と直接入る電話か日報システムになってしまった。こうなると、部下にとって都合の良い情報だけが流され、都合の悪い情報は伏せられてしまうのである。最近は以前無かったような、十分管理されておれば起こらないような企業の不祥事が多くなったのもこのようなことが原因とみてもよいのではないだろうか。部課長と呼ばれる会社の管理者層はこれからの時代、部下から信頼されてたとえ部下にとって都合の悪いことでも報告が入るような人間関係の形成が最も重要になるのではないだろうか。昔のように威張っているだけの上司では勤まらない時代になったのである。

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