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★★ 『紙』の文化から『画面』の文化へ ビジネス文書の変遷 ★★ 2006年07月08日

 企業内では多くのビジネス文書が行き交っている。業務処理の殆ど全部を何らかの形でコンピュータが処理する時代である。ビジネス文書は最終的に紙である場合でもどこかでコンピュータが介在している。手書き文書を「気持ちがこもっていて良い」と評価する人もいるが、一方では「非合理的な前世代の古い奴」という見方もされるのである。まして、ミミズの這ったような下手くそな手書き文書だと相手に失礼になってしまうものである。

 企業では業務システムとして、データ入力して伝票とか帳票という形で紙に一定書式で出力するというのが多い。しっかり標準化がなされた企業では社内のビジネス文書はコンピュータで作成する場合も定形書式が決められ、その書式で作成されたものでないといけないということになっている。しかし、社員が自分で勝手に書式を作るというのも案外多いものである。こんな時に、ワープロ派とスプレッドシート派(表計算)に分かれるていることに気がついた。

 ワープロを使うのかスプレッドシートを使うのかは、出力する形態に依って使い分けるものだと思っていたが、人によって、何でもかんでもワープロで作る人と、何でもかんでもスプレッドシートで作る人がいる。ちなみに筆者は一応使い分けてはいるが、どちらかといえばワープロ派である。使い分ける根拠としては、文書の中で表の比率が高い場合はスプレッドシートであり、長い文章が入る場合はワープロである。またページ数が多くなる場合もワープロが有利である。ワープロでもスプレッドシートでも全く同じに紙に印刷することは可能である。何が原因でこのような派閥に別れたのであろうか?

 人による好みとか、その人がどちらを先に使い始めたかとか色々あるが、元はといえば『紙』である。ワープロは元々紙に文書を印刷するための道具として開発されたものであり、文書を入力する場合も、予めA4とかB5とかの用紙サイズが決まった上で、余白や1行の文字数、1ページの行数などの書式を決めて入力をしている。これに対してスプレッドシートは用紙は関係なく、でっかいシートを用意し、そのどこにでも文書や表を作ることができる。そして、印刷したい場合にどこからどこまでを印刷するというように指定できるのである。

 従って、文書を作ろうとするとき、紙に印刷された結果をイメージする人はワープロ派になる。印刷結果は考えずにとにかく内容を重視する人はスプレッドシート派になるということである。スプレッドシート派の人は全く表を含まず文章だけの場合でもスプレッドシートを使ってしまうのである。逆にワープロ派の人は複雑な計算を伴う表が入ってきても、ワープロに表を取り込んで見事な表入り文書を作成するものである。どちらのケースもちょっとした技術が必要なのであるが、のめり込めばなかなかうまく使いこなせるものである。

 コンピュータが普及し始めた頃、紙の消費が減るだろうと予想されたが却って紙の消費が増えたといういきさつがあった。当時は何でもかんでも紙に印刷したものである。印刷して内容確認し、間違いを見つけては印刷し直すということで、ビジネス文書1部が完成するまでに、4,5部が書き潰し印刷されるという時代もあったのである。これが、ようやくパソコン一人一台時代がやってきて、当初の予想通りに紙の消費が減る傾向が出始めたと言えるのである。情報の漏洩防止とか、紙ごみ処理の有料化とか色々あって最近はコンピュータからの印刷出力は制限されるようになってきている。

 そんなことで、最近は文書と言っても、紙に印刷しないことが多くなってきた。Eメールが発達したため、文書という形にしないでEメールだけで済ませてしまうことも多くなったし、一応文書の形にしてもEメールの添付ファイルとしてやり取りするケースが多い。我々はようやく『紙』の文化から『画面』の文化へ移り始めたのである。

 こうなってくると、読み書きするのはすべてコンピュータ画面に対して行うことになり、紙の用紙サイズとか書式は無関係になってしまう。というより紙を意識した書式は却ってコンピュータ画面でみる場合に邪魔になるのである。ワープロでは印刷イメージの画面があるが、これだとページ間の余白が邪魔になって読みにくいものである。

 最終的にはコンピュータ画面を前提としたビジネス文書が台等することになる。現時点で、コンピュータ画面を前提とした文書としては、プレゼンテーションツール(パワーポイント等)とかインターネットのウエブページが代表的なものになる。プレゼンテーション用は専用のデータ形式を使っているが、ウエブページではHTMLとかXMLなどの一応標準化されたデータ形式が採られる。インターネットのホームページだと広告が多くて見づらいが、ビジネス文書としてパソコン画面で見やすい文書を作成すれば、紙印刷用のワープロで作った文書よりもずーっと見易い文書になるものである。次期のワープロはデータ形式にXMLを使い、コンピュータ画面で見ることを前提としたのものに変わっていくようである。

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