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★★ 自転車事故が増加 ★★ 2006年04月13日

 自転車の事故、それも自転車と歩行者の事故が増えているという。警察が自転車の取り締まり強化に動き出したとのことである。永く自転車通勤をしている筆者としては憂慮すべき事態である。

 環境問題から自動車よりも自転車をもっと利用しようと呼びかけたりもしているので、自転車の利用者が増えていると思われる。利用者が増えれば事故が増えるのも仕方がないと言ってしまえばそれまでだが、運転マナーが悪化しているのかも知れない。自転車の価格が低下して、あまりにも手軽に手に入り、壊れてもすぐ買い換えられるというような環境もマナー低下につながっているかも知れない。筆者が子供の頃は自転車は何万円もしたのである。サラリーマンの給料が1〜2万円の時代だから、一月の給料でやっと中古自転車が手に入る程度であった。だからものすごく大切に扱い、よく手入れしてピカピカに磨いていたものである。そんな自転車をぶつけて壊そうものなら、親から大目玉をくらったものである。おのずから運転は慎重であったものである。その頃と比べて物価が十数倍に上がった今、新品の自転車が安いものでは1万円以下で買えるのである。手入れしなくても錆びないステンレスやアルミ合金製なので今時自転車をピカピカにする人も居なくなった。やはりこれが自転車の運転マナー悪化の最大理由のように思える。

 自転車事故増加の責任は行政側にもある。環境問題から自転車利用を呼びかけておきながら、全く自転車走行環境を改善していないことである。街中に自転車走行帯のある道路がどれくらいあるだろうか。公園や観光地に自転車道路など見かけるが、街中ではゼロである。車道の路側が少し広くとってあると、そこは格好の自動車の駐停車スペースとなって自転車は走れない。仕方なく、歩道走行可として歩道を走らせているのであろうが、歩行者と自転車を一緒にすれば当然ながら事故は起こるのである。

 筆者は歩道を自転車で走っている時、歩行者がいると、車道によけるようにしている。歩行者というものは後ろに注意することなく、ふいに方向を変えるものである。歩道の右側が空いているのでそちらから歩行者を追い越そうとすると、突然右側に寄ってきてぶつかりそうになるというのはよくあることである。

 郊外の道路では歩行者よりも自転車の方が圧倒的に多くなっている。それなのに歩行者優先の歩道と車優先の車道しかないのである。

 事故防止対策を検討する人はこのような状況を把握しているのであろうか。必ず日常自転車を利用している人が対策を検討すべきである。自転車側の立場を知らずに規制や取締りを行うと実態に合わないとんでもない規制をかけようとするものである。

 マスコミの報道も完全に自転車を悪者として偏った報道をしている。報道関係者にも自転車利用者はいないようである。マスコミはこんな時、自転車走行帯の無いことを指摘して自転車のための道路整備を訴えるべきであるのであるが、どうしたことか。

 傘さし運転も駄目といわれているが、これも自転車に乗っていない人の考えであろう。確かに運転未熟な人では危険であるし、片手でハンドルを持っておれば、安定性は低下する。しかし、「方向指示は曲がる方向に手を挙げなさい」となっている。この時は片手になるはず。ということは片手がいけないということではないはず。前がよく見えないからと言われるかもしれないが、最近は殆どの人が、透明傘を使っている。透明なら前はよく見える。むしろ合羽を着てメガネをかけている時の方がメガネに付着する水滴で前が見えなくなる。だから筆者は合羽を着ていても、透明傘を差して自転車に乗っているのであるが、これがいけないと言われると却って危険な運転をしろと言われていることになる。

 お役人が高級車を乗り回している限りは行政の目は自転車には向いてこないのである。事故が多発してようやく重い腰をあげようかという段階のようであるが、対策は本当に無謀運転する自転車を取り締まることと、何よりも街の中に自転車走行帯を整備することである。不要なダムや高速道路を造る税金や官製談合で無駄遣いしている税金はこちらに回すべきではないだろうか。お役人が昔のようなささやかな生活に戻り、高級車を自転車に乗り換える時が自転車環境の夜明けになるような気がしてならない。果たしてそんな時代は来るのだろうか。

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