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★★ デジタルとアナログ ★★ 2002年11月14日

 「デジタル(digital)」と「アナログ(analog)」という言葉は数字表示のデジタル時計登場以来頻繁に使われるようになりました。その後、あらゆる機器がデジタル化され、数字表示に変わり、「デジタル」が最新技術の象徴のように思われるようになりました。実際、CDがレコードにとって替わり、デジカメ、デジタルビデオが普及し、テレビもデジタルに変わろうとしており、デジタルの方がアナログよりあらゆる面で優れているように思えます。特にパソコンの普及でパソコンが使える人を「デジタル人間」、使えない人を「アナログ人間」などと呼ぶ風潮もあり、「アナログ人間」は遅れているという風に見られたりしました。

 「デジタル」は「アナログ」より優れているのでしょうか? 技術的な目で見ればNOです。「デジタル」は「アナログ」の省略形に過ぎないのです。鈍感な人間の目や耳など五感をごまかしたとんでもない曲者なのです。デジカメとフィルム式カメラの例で見てみましょう。デジカメではCCDの受けた、元はアナログの光の量を0から255までの明るさの数値に変換し、JPEG形式のファイルで保存します。フィルムでは3原色をそれぞれ無段階で銀塩の色の濃さで表現します。デジカメでは256段階に対し、アナログでは理論上は∞段階です。ただ、デジカメの段階の違いが人間の目では認識できないレベルのため、プリントされた写真を見比べても違いが分からないのです。高級デジカメでは約4000段階で記録できるものもあり、違いの識別は不可能でしょう。

 パソコンの出始めのディスプレイは緑と黒の1ビット表現でした。その後出てきた初期のパソコンカラーディスプレイでは、256色程度しか表現できなかったので、色の濃さの境目がはっきり分かるような粗い像でした。それが進歩し、現在のフルカラーディスプレイは24ビット1677万色表示まで可能になったということです。これでも1原色あたり256段階です。つまり、デジタルが進歩して、アナログを目指したということになります。アナログはデジタルの究極の姿なのです。元々アナログの方がデジタルより性能的には上であったと言えます。

 それなのになぜあらゆるものがデジタル化されるのでしょうか?それは、中間の処理がデジタルの方が有利だからです。デジカメではCCDに溜められた電価まではアナログですが、それが数値に置き替えられて計算処理の後圧縮されて一定書式のデジタルデータファイルJPEGとして記録されます。これがパソコンでディスプレイに像として表示され、またプリンターで印刷され、人が目で見る時はアナログで認識しています。この中間におけるあらゆる処理、すなわち圧縮したり、記録したり、通信でやり取りしたり、編集したりがコンピューターを使うため、実に便利にすばやく確実に大量に処理できるからです。

 テレビ放送もデジタル化が進められています。これもデジタル化して人間には認識できない程度に情報を省略することにより、段階的な、いわばスカスカの情報のため、同じ電波に数チャンネル分の情報を乗せられるのです。数値情報になっているため、コンピューターを使ってできる処理は何でもできてしまう、すなわち高機能化が可能になるのです。

 「デジタル人間」は色んな仕事ができるけど(高機能)、ひとつの仕事のできばえ(性能)は「アナログ人間」より数段劣るというのが結論です。

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