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★★山の自然保護について思う事★★ 2001年7月28日

 近年、環境問題が地球規模で叫ばれ、炭酸ガス濃度増加による温暖化や、フロンガスによるオゾン層破壊、森林面積の減少問題に対策がとられつつあるが、これらと相俟って日本の有名な山々でも登山者への規制が厳しくなってきている。登山道の両脇には至る所ロープが張られたり、木道が造られて踏み出しが規制され、休憩で道端の草の上に座るなどとんでもない、テントを張れるのは決められた有料のキャンプ場しか駄目というような状態である。

 私が学生時代、ワンゲルでテントを担いで山を歩き回った昭和30年代末頃は殆ど規制は無く、どこにでもテントを張りキャンプができたものである。尤もその頃はまだ登山者人口も少なく、山に入るには重いテントや食料、炊事用具を詰めた大きなザックを担いで登る必要があった。たまに行き交う人と「こんにちは」と挨拶し、ルートの情報交換した。大抵の沢の水は飲むことができ、うまかった。本当に良き時代であったように思う。 これが、最近では山を歩いても、行列続きで、「こんにちは」の挨拶もまともにしていたら息が続かないほど混むようになってしまった。人が増えれば、不心得な人も増え、ゴミが捨てられ、踏み荒らされ、自然破壊が進むため規制強化せざるを得ないというようになるのも仕方ないことでしょう。

しかし、なぜ山を愛する事を知らない不心得な人まで山に入るようになってしまったのでしょうか。

私が山に登ってがっかりすることが多々ある。
 〇山の中でブルドーザーやユンボ等の重機を見たとき。
 〇景色の良い場所に山小屋があり、小屋の周りにドラム缶や生活用品が無造作に放置されていたとき。
 〇山小屋の脇でジーゼルエンジンの発電機から出る排ガスの臭いを嗅がされたとき。
 〇汗水流して登ってきたのに、そこに車を見たとき。
 〇きれいな景色の写真を撮ろうとしたら、ファインダーの中に電線が見えたとき。
 〇登山道を長時間歩いているのに、いつまで経っても視界にスキーリフトやゲレンデ用に伐採された山肌が見えるとき。
 〇当方は本格的な山歩きの装備をしているのに、スカート、サンダル履きの人をみたとき。

 規制をかけたり、登山者に注意しているのは、地元の自治体や山小屋関係者 の方々と思われますが、もしかしたら、これらの方が自然破壊に大きくかかわっ ているのではないかと思ってしまう。山小屋そのものが景観を悪くしているケー スも多い。電力供給のために、発電機をまわしたり、電線を張ったり、排水を出 すため、沢水が飲めなくなっている。ロープウエイやリフト、道路も同様景観を 悪くし、自然破壊している。これら施設があるため、手軽に誰でも山に入れるの で不心得な人までもが山に入るし、許容量を超えた人々が山に入ってしまう。体 が弱い人にも平等に自然を楽しんでもらいたいという考えもあるかも知れないが 、結局「開発」という名の「儲け主義の人集め行為」が一番自然破壊を行ってい るのではないでしょうか。

 本来山小屋など無い方が良い。どうしても必要というなら、目立たない場所に造るべき。電気など不要、暗くなったら寝ればよい。電力が必要なら太陽電池や燃料電池や風力発電などにして、ジーゼル発電機や電線は撤去すべき。自然保護対象地のロープウエイやリフトなどは撤去すべき。道路もつぶして元の森に戻すべき。物を運ぶ必要があるならヘリコプターを使えばよい。これらが無ければ、自然の自浄作用、復元作用の許容量を超えた人が山に入ることもなく自然も良い状態で保たれるのではないでしょうか。

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