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★★ 日本の光害はひどい! ★★
2016年03月12日

 筆者は最近趣味として天体写真撮影を始めた。筆者の住まいはさいたま市なので東京という超大都市の光害地帯だ。当然自宅からは星はまったく見えない。よく目を凝らして見ると、1等星以上の星が2~3個なら辛うじて見える程度である。そんな光害地でも条件が良ければ、写真で撮ると5等星程度までなら何とか写る。本格的にやるなら光害の少ない場所へ遠征すればよいということで天体写真を始めたのである。

 光害承知の上で始めた天体写真であるが、いざ自宅バルコニーから撮影しようとすると、ほぼ水平方向にある街灯の光がもろに目に入ってくる。カメラにフードを付ければ写真への直接の害は減るが、筆者の目に直接街灯の光が入るので、瞳孔が閉じて星が見えず、カメラのファインダーに星を取り込むことができないのだ。月が出るまでにとか、雲がかかるまでに撮りたいとの時間制約のなかで焦りながらやっていると、ファインダーへの取り込みだけで30分以上もかかってしまうのだ。そんなときに街灯の光がうらめしく思われるのである。

 国際宇宙ステーションから見た夜の日本列島は正に地図通りの形で光り輝いている。それだけ空に向けて光が出されているのだ。でもなぜ光を空に向ける必要があるのだろうか。必要ない!かつては照明についての規制はまったく無く、むしろ「百万ドルの夜景」などと街が明るいことが街の発展のシンボルのように考えられていたのだ。

 最近になってようやく環境省が光害対策ガイドラインなどを出して「指導」しており、屋外照明機器メーカーや設置事業者が少しづつ対応をしつつあるという現状のようである。従って新規に設置される屋外照明機器は直接上空に向けて光を発するものは減っているようであるが、斜め上とかについてはデザイン重視などであまり厳密には配慮されていないのだ。したがってここ十数年については絶対量は増えているので悪化はなくても改善には至らないのである。皮肉にも最も光害対策に貢献したのは2011年の東日本大震災時の原発事故をきっかけにした節電である。光害への取り組みも、長野県など本来光害の少ない自治体の方が積極的なのがなにか変だ。東京をはじめとする首都圏でこそ光害対策にもっと積極的に取り組んでもらいたいものである。

 光害は住環境への問題や動植物への悪影響は「害」として対応してもらえるようだ。だが一番切実に訴えているのは天体観測関連の人達である。ところが一番そっぽを向かれているのも天体観測関連であろう。「星が見えない」というのは「害」として認識されていないのだ。

 星に興味を持つ人が少しでも増えて光害が少しでも減ることを祈りたい。

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