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★★ 「IT社会」と言われるけど ★★
2014年10月22日

 仕事柄から情報収集が偏っているかも知れないが、今の世の中何でもかんでも「IT(Information Technology)」である。この言葉自体そろそろ色褪せてきた感もある。世にコンピュータなるものが出現して以来、アルファベット2~5文字程度の省略語が溢れてきた。今日のIT関連ニュースの中だけでも、「有機EL」「WiMAX」「ICチップ」「PHS」「SE」「IPA」「IGF」「GIIC」「WITSA」「JASRAC」「BLOG」「API」「XML」「BCP」「USB」「CD」「WEB」「DNS」「CPU」「SNMP」「ICMP」「MACアドレス」「OS」「RAM」「JDX」「ROM」「HDD」「SSD」「NAND」「PC」「URL」「SNS」・・・と次々出てくる。さすがに初めて使う省略語は括弧付けで英語のフルネームが付いているが、その英語が判らなければ意味不明である。IT用語辞典を覘いてみると何とその数の多いこと、数千個はありそうである。普段ニュースなどで補足説明なしに使われる省略語だけでも200は超えそうである。ニュースを読んでいて、これらの意味が判らなければニュースそのものが理解できないということになる。

 何でこんなに省略語が多く使われるのかというと、出所が殆どアメリカであり、当然英語である。これを日本語に直したら余計意味不明になるので、そのまま英語で使ってしまう。フルスペルで表記していたらスペース制約で入りきらないし、くどくなるので省略する。というパターンであろう。しかし、こんなことをするので、これらニュースを読み理解すべき経営者などの対象者が「読んでもさっぱり判らない。だから読まない」ということになってしまう。普段よく見慣れているIT関係者でも意味不明の省略語にぶつかることが多い。判らなければネットで調べて一応理解し、大半は感覚的に「大体こんなことを言っているのだな」という理解レベルである。

 パソコンは今や企業や家庭において「普及」という段階は通り越して「必需品」になってしまった。一昔ならぬ半昔前と比べても「使い方」は全く変っている。最も変った点は「常時ネット接続」であろう。パソコンはスタンドアロン(ネットではなくパソコン単体で使う)での使用は激減し、殆どがネットで使うようになった。企業のシステムならデータはデータウエアハウスと呼ばれるデータベースから取り出し、プログラムはWeb型になっており、ユーザーのパソコンにデータを保存するのはセキュリティ上禁止される方向である。何か不明なことがあれば、一般的な事柄であればネット検索すれば即解決する。会社内の事でも殆どの事項はコンピュータにデータがあるので、閲覧権限を持っておれば誰かに聞く必要もなく即判るものである。例えば、庶務担当者に「ある部屋のエアコンの調子が悪い」と連絡が入ったとする。その庶務担当者は固定資産データベースを検索すると該当エアコンの設置年月日や購入先名、メーカー名、機種、機番まで知ることができる。そのメーカー、機種、機番でネット検索すれば、その症状から故障なのか、設定上の問題なのかが判る。故障だと判れば、取引先マスターから購入先の電話番号、担当者を知り、電話を掛けて修理依頼する。見積もりを取り、規定以上の金額なら、稟議書システムを起票し、ネット上で決裁を受ける。OKなら修理発注、関係者にメールで通知する。ざっとこんな具合であろう。家庭内でも、例えば「風呂場の壁や天井がカビで汚くなり、一部塗装が剥げてきたのできれいにしたい。」というとき、ネットで「風呂場 塗装」と入れて検索するだけで、色んな情報が入る。カビを防ぐにはどうしたらよいか。塗りなおしを自分でやるならどんな物を買ってきて、どのようにしたらきれいにできるかが判る。業者に依頼するなら近くにどんな業者があるのか、費用はどの程度かかるのか、業者の信頼の程度はどうかなどまでわかるものである。

 こんな時代なので、物を売る事業者、サービスを提供する事業者もネット抜きでは事業発展は有り得ない時代になっている。それなのに、どうも事業経営者のITに関する関心度、理解度がまだまだ低いように思える。世が世なので当然自社のホームページぐらいは開設してはいるであろう。しかし、自社のホームページを顧客の立場に立ってじっくり見ている経営者はどれほどいるだろうか。先日、筆者はあるサービスに加入しようかと思い、そのホームページを開いて見た。ところが、加入するにはどうしたら良いのかなかなか判らない。サービスの名称自体が複数存在し、その違いもよく判らない。何度も各ページを行き来し、何とか概要が判ってきたが、加入するには、電話を掛けて申込書を郵送してもらい、申込書に記入してまた郵送しなければならないとのことがわかった。しかし、今の時代、なにも電話をかけて申込書を頼まなくても、ネットで登録申請できるようにすべきではないか。とホームページの見辛さと、システムの時代遅れを感じた次第である。結局加入はしばらく見送ることにしたのである。この会社はおそらくホームページは担当者まかせで、担当者は外部業者まかせで運営しているのであろう。その結果が「利益機会喪失」を起こしているのであるが、それに気付いていないのである。

 今の時代「ITの理解なくして経営者の資格なし」と言えるのではないだろうか。ITを理解するにはニュースも理解できなければ始まらない。ニュースは省略語と英語のカタカナを日本語の接続詞や助詞で繋いだ表現であるが、果たしてこんなのでよいのだろうか。いつもIT系ニュースや宣伝記事を読む度にこんなことを感じている。

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