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★★ ネイチャーフォト向けデジカメ ★★
2014年09月21日

 筆者はネイチャーフォトを主として写真撮影し、ウエブに掲載することを趣味としている。撮影対象は風景、野草の花、野鳥、昆虫である。写真は多くを機材に依存するものである。筆者は当サイトの撮影機材紹介にあるような機材を使ってきた。デジカメ黎明期から始まったので、デジカメの歴史がそのまま筆者の使用する機材の変遷となっている。しかし貧乏な筆者なので、その時代に発売された最高のものを買うなんてことは到底不可能であり、熟考に熟考を重ねてこれだけはどうしても欲しいと思う機材を最低限の出費で購入する形を取ってきた。そして、今回購入したのが富士フィルムのFinePixS1である。これがどんな物かと言えば、「ネオ一眼」に分類される光学50倍ズームのデジカメである。

 一般的なデジカメ流行の流れとしては、今の時代はデジタル一眼レフか、レンズ交換式ミラーレスであるが、デジタル一眼レフは既に持っているが交換レンズまで持ち運ぶには重過ぎる。ミラーレス機は小型軽量ではあるが、EVFの無い機種が多いのでネイチャーフォト撮影には使えないのだ。液晶モニターだけしか持たないデジカメは屋外撮影では全く役に立たない。モニターはあくまでモニターであって、屋内で結果を確認するためのものであり、けっして屋外撮影のファインダーとしては使えないのである。まして高齢化の時代である。近くのモニターを見るにはその都度老眼鏡をかけろというのだろうか。そんなわけで視度調整の付いたファインダーまたはEVFはデジカメに不可欠なのである。また、花の接写、風景、野鳥撮影となるとマクロレンズ、広角レンズ、中領域ズームレンズ、超望遠レンズが必要なのだ。交換レンズでズーム倍率の高いものも出てきてはいるが、いまのところ17mm~300mm(35mm換算25mm~450mm)が最高で17倍である。またフィールドでのレンズ交換作業はゴミが入らないよう神経も使うし、かなり面倒なものである。

 これに対して、近年「ネオ一眼」分野で光学30倍~60倍(35mm換算25mm~1200mm)といった超高倍率ズームの機種が出てきたのだ。これはズームレンズ技術の進歩と手ブレ防止技術の進歩、それと1/2.3型と小型でありながら1600万画素しかも高感度といった裏面照射型CMOSセンサーの開発によるものである。筆者は2010年に富士フィルムのFinePix HS10を購入した。これは30倍ズームで35mm換算24mm~720mmをカバーしており、レンズ領域としては満足できたのであるが、AF(オートフォーカス)が遅いのと、連続撮影間隔が実質2秒もかかり、連写も7コマ/秒ではあるが7コマまでしか撮れず、次の連写までに保存のため15秒も待たなければならない代物であった。このため風景写真にはなんとか使えたものの、超望遠域での野鳥撮影には殆ど使えなかったのである。一眼レフでは4.5コマ/秒での継続連写ができたことを考えるとこの時代のネオ一眼の価格では高性能のエンジンは使えなかったのであろう。

 そのうちネオ一眼でも応答の速い機種が出るだろうと、待っていたところ、富士フィルムのfinePixS1が何とか我慢できそうな仕様で出てきたということである。筆者の希望は「一眼レフと同程度の5コマ/秒でシャッターボタンを押している間は100コマくらいは連写が可能なもの」であるが、これが実現するにはまだ2,3年はかかりそうな気がしていたのだ。問題の連続撮影間隔は0.6秒とのこと。連写は3コマ/秒・5コマ/秒・10コマ/秒があり、どれも9コマまで、保存に要する時間は4秒ほどのためギリギリで我慢ということである。

 上述のEVFであるが、まだ一般的には20万画素クラスが多い中、これは92万画素あり、まあ満足と言えそうである。一眼レフに200mm~500mmレンズを付ければ双眼鏡代わりに使えるのであるが、20万画素のEVFでは画面が粗く双眼鏡代わりにはとても使えない。92万画素だと一眼レフのファインダーには及ばないが、これも何とか双眼鏡代わりに使って野鳥を探すのに使える。もうひとつモニターであるが、筆者にとって撮影中はモニターは全く不要と言っていいほどである。そのためモニター画面はいつも裏返している。裏返しておけば、常にEVFが有効なので切り替えボタンで切り替えるという手間も要らない。しかもその分バッテリーも長持ちするのだ。「EVFにアイセンサーが無いのが残念」とのレビュー意見も見かけるが、筆者は今のままでOKと言いたい。

 筆者にとって、このカメラで不足なところはマクロ機能である。野草の花を撮影する際、十分に寄れないという不満がある。スーパーマクロで1cmまで寄れるが、これは最広角側だけのため、実際には大きく撮れず、背景をボカスこともできないのだ。できれば1:1程度まで撮れるマクロ機能が欲しいところである。1200mm相当の超望遠に1:1マクロを要求するのは無理なのだろうか。ということで、筆者はこれをカバーするべくクローズアップレンズを購入し、大きく撮りたいときはクローズアップレンズを前に付けるということにした。しかし、ネオ一眼ではこのマクロ機能もそのうち実現するのであろう。


 以上のようなことで、筆者のネイチャーフォト分野では「ネオ一眼」の光学50~60倍ズームで、継続連写可能、マクロ撮影可能というような機種が向いているということで、メーカーさんにはもう少し頑張っていただきたいものである。

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《追記》2014/10/15
2014年10月3日にキャノンからPowerShot SX60 HSが発売されました。これは光学ズーム65倍で仕様のすべてでFinePixS1を上回っており、特に筆者が待ち望んでいた連写機能は継続6.4コマ/秒と一眼レフ並みとなっています。
「もう少し待てば良かったのに」と少し後悔しています。