★★ LUNT太陽望遠鏡のエアープレッシャーチューニングについて ★★
2021年04月25日
この4月7日にLUNT LS60MT/B600を入手以来太陽が出れば必ずこれを使って撮影してきました。この太陽望遠鏡はLUNT独特のエアープレッシャーチューニング方式を採用しており、一般的なティルト式とは異なり写真撮影に適した方式だと説明されています。
これの使い方としては、チューニングハンドルを回して波長を合わせるとのことですが、締めて圧力を上げた場合に見える波長は長波長側にシフトするのか、短波長側にシフトするのかの説明はどこにもありません。そのため撮影時に締めてみたり緩めてみたりするのですが、ハンドルを締めるにはかなりの力が必要な上、あまり大きく見え方が変わるわけでもなく、最適状態にするのはわりと大変な作業になります。締めるのには力がいるので、一旦目一杯締めておいて、モニター画像を見ながら緩めていく方法がやり易いようです。
最も緩めた状態
1回転締めた状態 通常この状態で保管
この位置が最適
最も締めた状態
先日の撮影で、太陽の西縁赤道近くのプロミネンスにおいて、②の状態ではよく見えず、③にすると良く見えるようになりました。赤道に近い西縁なので自転で地球から遠ざかるプロミネンスなのでドップラー効果で長波長側になっています。
従ってチューニングハンドルを締めて空気圧を上げると長波長側にシフトしていることになります。
天文学辞典によると
太陽望遠鏡に使われるエタロンはファブリーペローエタロンで理論的には左図において、反射面間の間隔をd、反射面間に封入される物質(通常は空気もしくは真空)の屈折率をn、反射面の法線方向に対する光の入射角度をθとすれば、
mλ = 2d n cosθ
と書ける。ここでmは整数である。
LUNTのエタロンはおそらくチルトし、短波長側にシフトした状態であると思われます。ジズコのHPの説明によれば、エタロンはハウジングに収められ、エアープレッシャーチューニングによる加圧はハウジングに対して行われるとのことです。
ハウジングを加圧すれば基板と加圧空気との間で屈折率の差が減少しθが小さくなります。そうするとcosθは1に近づき大きくなります。上の式でdとnは不変のためλは大きくなります。すなわち透過光は長波長側にシフトすることになります。
LUNTのエアープレッシャーチューニング方式のエタロンは短波長シフト状態にチルトされていると言うのはチルト方式では画像ムラが生じ易いのですが、私のLS60MTで撮影した太陽全球画像では多少のムラ(明るい部分が左下に偏っている)があり、これはエタロンのチルトによるものと思われます。製造時にこれが中心になるようにしっかり調整されておれば、エアープレッシャーチューニングでは変わらないので優れた方式だと言えます。私のはちょっと偏っているのでちょっとハズレ商品だったのかな?ということになります。